主に,水圏環境における有機物生産とそれに関わる物質循環に関して,以下のような研究を行っている。
(1)光学的手法による植物プランクトン一次生産速度の測定
(2)植物プランクトンの有機物生産に関する研究
(3)河川・湖沼におけるシリカ循環の生物地球化学過程に関する研究
(4)衛星リモートセンシングを利用した陸水域におけるクロロフィルa濃度の推定
1)「光学的手法による植物プランクトン一次生産速度の測定」:植物プランクトンの光化学系IIにおける電子伝達速度(ETR)と炭素固定速度との関係性を評価し,低放射照度域では顕著な正の相関関係があることを示した。現在,その結果に基づいて,琵琶湖北湖沖における植物プランクトンの一次生産速度の連続測定を行っている。
2)「植物プランクトンの有機物生産に関する研究」:琵琶湖における植物プランクトンの総生産に対する粒状態有機炭素生産,溶存態有機炭素生産,呼吸の割合が,それぞれ,47〜54%,5〜8%,41〜45%であることを明らかにした。これらの結果に基づいて,植物プランクトンよって固定された炭素の約5割が粒状態有機炭素プールに,約1割が溶存有機炭素プールに入り,残りの約4割は暗呼吸や光呼吸などによって無機炭素プールに回帰されると推定した。
3)「河川・湖沼におけるシリカ循環の生物地球化学過程に関する研究」:陸水域におけるシリカシンクの規模の変動過程とそれに影響を与える因子を評価し,シリカシンクの規模は水域へのリン負荷量,水塊の成層の程度,植物プランクトン種組成によって強く影響されることを明らかにした。
4)「衛星リモートセンシングを利用した陸水域におけるクロロフィルa濃度の推定」:琵琶湖に対応した水中生物光学アルゴリズムの作成と大気補正の見直しを進め,琵琶湖全域におけるクロロフィルa濃度分布の測定を行っている。現在,測定精度の向上のため,現場観測と衛星観測を2012年から月数回の頻度で継続して行っている。(名古屋大学との共同研究)。 |