環境科学部・環境科学研究科の一年
土屋正春
環境科学部長
環境科学研究科長
独立行政法人化を平成18年度に控えているだけに学部の様子は静かに見えても内なる課題は多いと言わねばならない。学部の組織論も結局は人の問題に帰する部分が多い。平成16年度末での退職予定者が5名に及ぶことから容易に考えられることだが、何よりも今後続く教員人事のあり方に各学科の将来構想をいかに反映させるかは大きなポイントになる。前任者とは微妙な、場合によってはかなり大きく相違点のある特性が後任者に求められているのはこのことの現われだと言える。しかし、ここでの相違のあり方が内部的な調整的側面を有している場合があるとすれば、改めて人事管理のあり方についての検討は避けることができないのではないか。この点については学部全体としての積極的な支持が得られないままに時間が経過しているため、学部運営の長期的な展望を得るためにも再度の問題提起をしたいと考えている。
学部の将来をめぐる議論であまり深刻視されぬままで来たのは入学志願者の減少傾向がいよいよ明確になってきたという事実である。この件については前号でも触れたのだが、この原稿執筆の時点で得られている17年度入試の数値は、これまでの経年変化を通じて事態が焦眉の急であることを告げている。
ここで考えるべき一つの点は、全志願者の減少傾向が急激な中で県外志願者と県内志願者との間の大きな違いである。平成15、16、17年度の3ヵ年を通じた前期後期を合計した学部全体の志願者数を見ると、県外志願者の変化は929⇒745⇒519と50%近くにまで大幅に減少しているのに対し、県内志願者の変化は110⇒126⇒89 という変化にとどまっていることがそれである。県外の受験生はここ彦根の地には想いを寄せず上空を東西に通過しているのに比べ、県内の受験生は注意を払っているということになる。ここには推薦入試の数値は算入されていないので、積極的な学部キャンペーンを行うとすれば県内高校を対象とした働きかけがより有効だと考えられるが、それぞれの学科ではこの課題への対応をどう考えているのか、いろいろ議論されている戦略をさらに具体化し実践せねばならない。
この問題を考えるに際しての別の点は、受験生の世代が「環境」を考える場合には「生き物」との関係で意識されることが多いという事実で、高等学校からの模擬講義の依頼のほとんどがこの分野の内容を希望していることが何よりもこのことを雄弁に物語っている。今年度から始められた高大連携事業で学部が関係している連続講座の内容も「生物」と「化学」である。その意味では特に環境社会計画専攻について言われることが多い「わかりにくさ」をめぐって、かなりの改善努力が必要なのは確かなことである。もっとも大学教育のレベルを維持するには学力の高い志願者を確保し続けることが不可欠の要件であれば、この問題について他の学科専攻に課題がないというものでは決してない。どこも志願倍率が連続低下していることを考えれば事情は同じと考えないとならない。
すでに具体的な取組も部分的に始められているが、年度末の繁忙期が過ぎ次第、各学科専攻の取組内容を持ち寄り、検討会議を開催することを予定している。引き続きのご協力をお願いする次第である。