「1人の100%より100人の1%」からの挑戦
西村 茂樹
環境生態学科3回生
「あなたは、どういったスタンスで、環境問題に取り組んでいますか?」こう聞かれたら、皆さんはどう答えますか。今の私はこう答えるだろう。「1人の100%より100人の1%」。この言葉が、私の環境問題へ取り組む指針であり、テーマとして常に心にある言葉である。
入学以来、環境問題に対して何かしたいと思っていた。しかし、何をどう取り組んだらいいか分からず、行動できなかった。そんな自分が、この言葉に出会い大きく変わった。この言葉を聞いた時、ビビッときた。「これだ!」そう思えた。今までのモヤモヤが、一気にすぅーと晴れていった感覚を今でもしっかり覚えている。
「1人の100%より100人の1%」とは、1人が100%の行動をすることはもちろん大切であるが、それよりも多くの人(例えば100人)が1%の行動を始めることの方が意味があり、重要ではないか、という意味である。確かに1人が100%でも、100人が1%でも物理的には同じ100%であり何ら変わりない。しかし、環境問題という、多要素が複雑に絡んでいて多くの人が関わっている問題では、より多くの人が取り組むことはとても大切なことであろう。だから、あまり環境問題に興味のない人に対してアピールすることは大事なことだと思う。そんな興味のない人が、何か身近なこと、例えば、トイレから出てくる時に電気を消すみたいな簡単なことでも、何かを始める"きっかけ"を得て、行動が始まっていけば凄いことだと思う。そして、そんな小さな活動でも、友人へ、地域へ、全国へ、・・・・・・と広がっていき積み重なっていけば大きな意味を有するだろう。そしてその積み重ね、広がりが、環境問題解決への力強く大きな力になっていくと思う。
だから、その言葉の意味を伝えたくて、1%を多くの人に広げたくて、たくさんの人に協力してもらい、この言葉の意味を様々な形で今まで実現してきた。そのうちの3つをここでは紹介したい。
(1)湖風祭エコプロジェクト
今年でもう7回目となり、県立大学でもすっかりお馴染みになってきた感のある湖風祭の環境対策"湖風祭エコプロジェクト"。このエコプロジェクトとは、多くのゴミが排出される学園祭を、排出されるゴミの量を減らし環境に配慮した学園祭にしようと開学以来続けられている取り組みである。多くの先輩方の苦労の積み重ねによって、洗い皿やゴミ分別等が導入され、1998年にはほとんどの模擬店が、皿を使うようになった。
私達は、その後の1999年と2000年に中心になって活動した。皿の使用が定着してきたのを受けて、より皿の回収率を上げる為のデポジット制度を導入した。また、学園祭とは環境問題を意識していない人も多く来る場であり、アピールには絶好の機会であると考え、いかにしたら来場者に関わってもらい興味を抱いてもらえるかを考え、客が皿を洗えるような仕組みを作った。その2つの制度を織り込みDRP(Dish Return Project)というシステムを導入した。この制度は来場者に積極的に関わってもらい、行動へのきっかけを感じてもらいたいと思い考案したシステムである。他にも以前から徹底されていたゴミ分別に加え、新たに「MY箸運動」も始めた。マスコミにも積極的にアピールを行なった。成果として、模擬店の協力もあって、全国でも有数の取り組みとなり、DRPへの模擬店参加率は全国の大学中1位、使い捨てトレー削減枚数も全国で5位以内となった。
(2)ワークキャンプ
全国規模のワークキャンプも催した。対象を環境問題に取り組んでいる1・2回生と、取り組みたいと思っているがなかなか始められない人達として行った。北は早稲田大から南は熊本県立大や長崎大までの人達が、彦根の荒神山に集った。
今後活動を始めていってもらえる可能性をより大きくできるように、ハイキングのような体を使うようなものから、勉強会的なもの、みんなで真剣に語り合うようなもの、といった様な多様なプログラムを行った。その結果、このイベント参加者から多くの環境サークル・環境NGOの代表者が生まれた。今もこのつながりは続いていて、全国規模で情報交換や意見交換が行われている。
(3)青年環境NPO「LEAFS」
そうして、今は"青年環境NPO「LEAFS」"という団体を運営している。この団体のテーマは、環境問題に取り組みたいがなかなか取り組みにくい人やあまり興味のない人に、始めるきっかけを、1%を見つけてもらい、さらに活動を広げていってもらうことである。LEAFSとは、Link to Environmental Action FriendSの略である。1%の繋がりがどんどん広がっていき、その1%が少しずつでも大きくなっていくことを願っての名前である。具体的な活動としては、湖風祭でのヨシ笛製作を通した琵琶湖生態系保全のアピールや藤前干潟・長良川河口堰見学等のエコツアー、琵琶湖湖岸のごみ清掃等である。先日、ある新聞社に取材を申し込まれ、受けてみると活動が「地味」だと書かれてしまった。確かに、"ぱっと"しないし、目新しさもない。でも私達は楽しむことを基本として、身近で"とっつきやすい"ことからわいわい活動している。そうやって、少しずつでもいい。環境問題に対して行動する仲間(FriendS)の輪を広げていきたい。
自然の素晴らしさを、環境問題を身近な問題だと、多くの人に知ってもらいたい。そして、できることからで構わない。何か、始めて欲しい。そのActionが広がっていって、環境問題解決に繋がっていくことを祈りながら、これからも活動を続けていきたいと思っている。「1人の100%より100人の1%」、この言葉を胸に秘めて。