環境動態学専攻この一年
環境動態学専攻長
矢部 勝彦
1 環境動態学専攻内の動き
環境動態学専攻長をこの一年間勤めさせていただきましたが、ご協力ありがとうございました。自分自身の反省を込めて、この一年のできごとを振り返って見たいと思います。
まず、教員の入れ替わりがあり、開学以来の教員の退職に伴い、新たに4月には秋田教授、川地教授、入江助手を迎え、5月には伴助教授、6月には後藤助手を迎えた。一方、大学院博士後期課程の開設に伴い6名を受け入れてスタートとし、それぞれの目標に向かって研究が始められ、いよいよ学部・大学院が整備された大学らしい雰囲気がかもし出されてきました。しかし、残念なことには、12月には生態系保全コースの重鎮で、世界的研究者でありました中山英一郎教授を病気により失い、大きな痛手をこうむりました。
2 大学院カリキュラムと研究領域の整備
平成13年度から大学院環境科学研究科前期課程(修士課程)における環境動態学専攻では専門教育の充実を図るために必修単位数を12から16に変更しました。また、履修科目として新たに「生物圏環境論」と「植物資源管理論」を新設し、より広い専門知識が習得でき、高度な専門性を生かして自ら新たな展開を行える見識を身に付け、自らが育つよう要求されることになりました。さらに、平成14年度から新たに琵琶湖博物館の研究者らによる「生物多様性論」と全国の新進気鋭の教官らによる「生態系保全特別講義」を新設し、より専門性に富んだ教育の充実を図りました。一方、過去3年間、分散・複雑化していた研究領域を整備し、教員の教育・研究指導をスムーズに運べるよう教員配置を一部改善し(1教員1研究領域担当)、生物環境圏コースを3研究領域、生態系保全コースを3研究領域(改善前は5研究領域)、生物生産コースを4研究領域に整備することができた。
3.博士前期・後期課程の大学院生の専攻について
平成13年4月には博士後期課程の大学院生6名(学内出身4名、学外出身2名)を迎え、その内訳は生物圏環境研究部門に1名、生態系保全研究部門に3名、生物生産研究部門に2名である。また、博士前期課程には新たに18名(学内出身13名、留学生3名、学外出身2名)を迎え、その内訳は生物圏環境コースに2名、生態系保全コースに9名、生物生産コースに7名である。一方、前期課程2回生は休学・留年生を含めて22名となりました。これにより博士前期・後期課程の大学院生は総計46名となってスタートしました。特に、後期課程の大学院生は博士の学位(環境科学)の取得を目指して新しい環境科学にふさわしい学位を創出する基礎を気づく第一歩を踏み出すことになりました。最後に、平成14年4月には新しく博士後期課程の大学院生を8名(学内出身6名)と前期課程の大学院生を22名(学内出身13名、学外出身8名、社会人1名)を迎えることになっています。
4 博士前期課程修了生の進路について
平成13年3月には第一期生を社会に送り出し、この3月には第2期生を送り出すことになった。その内訳について、一期生は県立大学大学院博士後期課程に4名と他大学大学院博士後期課程に1名が進学予定、留学生1名が帰国して同国環境省、3名が地方公務員、6名が環境関連企業、2名が製薬・種子関連企業、2名がその他(民間を含む)、2名が留年(休学を含む)、2名が不明(未定)の計23名である。二期生は県立大学博士後期課程に7名が進学予定、2名が食品関連企業、2名が環境関連企業、1名が公務員、6名が未定、5名が留年(休学を含む)となっている。修了していく大学院生の進路希望は専門を生かした職場であることは言うまでもないが、このように希望通りには進んでいないのが実態である。このことの意味するものは、環境に関する認識も社会ではISO14001認証取得などで意識は確実に高まっているものの、環境科学を専門に学んできた学生あるいは大学院生を受け入れる体制が確立していないためか、あるいはここ数年に亘る不景気の影響とも考えられる。
5 おわりに
わが環境動態学専攻では、自然環境のより深い理解のために自然生態系のみならず農林地などの半自然生態系に関する動態を解明しながら環境保全と管理の実現のための方法論について考えるとともに環境問題の解決を考えることのできるような教育・研究を目指してきた。しかし、3年経過することにより教育の面で歪みも見え出してきた。学部との連携が取れていないことによる延長上の専門教育が遂行できず、学部教育のやり直し講義、飛躍した講義、トピック的講義などに終始している面は反省点であり、今後の改善課題となるだろう。