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教員一覧 - 研究室紹介

上町研究室

テーマ「花の寿命と美しさを向上させるがく片の花弁化」

花の命は短く,早いものでは開花1日後に花びらが散ってしまうものもあります.花束などに用いる切り花では,エチレン阻害剤などの薬品処理や冷房下での輸送・貯蔵・展示など,花びらが散るのを少しでも遅らせるための工夫がなされています.しかし植物の中にはスターチス,ヘレボラス(クリスマスローズ),アジサイのように,花びらが散らないものがあります.これらの植物種は,花びらのようながく片を有しています.一般に,植物は開花後,花弁と雄しべを散らし,がく片と雌しべだけになってしまいます(その後,雌しべは果実に,がく片はへたに発達します).スターチスやアジサイなどの花びら状のがく片は,開花後も散らないがく片としての性質が残っているため,これらの植物の花は薬品や冷房などがなくても長い観賞期間を有しています.私たちは,このがく片が花弁のように変化するメカニズムの解明に取り組んでいます.

テーマ「日本固有種アジサイの系統進化と保全」

ガクアジサイ自生群落(青ヶ島)
エゾアジサイ自生群落(新潟)

アジサイは,切り花,鉢物,庭木,都市緑化植物として世界に広く利用されている重要な園芸作物です.アジサイ園芸品種を産み出すための主要な種はガクアジサイですが,この野生種は日本にしか分布していません.ところで,皆さんはアジサイと聞くと,梅雨の時期に優しい水色の花を咲かせている姿を思い浮かべることと思います.この優しい水色の色合いや草姿をもつアジサイ品種の誕生には,ガクアジサイだけでなく,日本の多雪地帯に分布する日本の固有種エゾアジサイが関わっていると考えられています.日本固有種のガクアジサイとエゾアジサイは,いずれも日本や朝鮮半島などの東アジアに分布するヤマアジサイから分化したものと推定されていますが,その過程は明らかになっていません.私達は,日本の固有種ガクアジサイとエゾアジサイが誕生した過程を明らかにすることと,これら固有種の保全と育種への利用のための基礎的な知見を得ることを目的に,ガクアジサイ,エゾアジサイ,ヤマアジサイの自生地で調査を行い,サンプリングした試料をもとに系統解析を行っています.

テーマ「動く遺伝子レトロトランスポゾンの活性化現象」

突然変異の発生株

突然変異により優良な形質を持つ個体が出現し,それを人間が見いだし利用することにより新たな作物や品種が発達してきました.この自然突然変異の主要因が,動く遺伝子,すなわちトランスポゾンです.一般に,植物ではゲノム配列の数十%がトランスポゾンで占められていますが(その多くは動く機能を失ったがらくた配列です),むやみに動かないようにメチル化により活性が封印されています.しかしその封印をかいくぐって稀にトランスポゾンが活性化することが有り,突然変異を引き起こします.もしトランスポゾンの活性化を制御する方法や,活性化しやすいトランスポゾンを見つけることができれば,トランスポゾンによる突然変異を効率的に育種に利用したり,変異により新たに生じた形質を決定する遺伝子を同定したりすることが可能となります.私達は,アジサイの少なくとも一部の品種・系統において,多様なレトロトランスポゾンが活性化している可能性が高いことを明らかにしました.現在,私達はアジサイで生じているレトロトランスポゾンの活性化現象の全貌を明らかにするための解析を行っています.

テーマ「都市緑化に適したアジサイの開発」

火山の噴火による火砕流跡地に
自生するガクアジサイ
強光耐性の栽培試験の様子

 バラやサクラなど美しい植物はたくさん存在しますが,その多くは管理に手間がかかるため,都市緑化植物として適していません.そのため都市緑化に用いられる植物種は非常に限られています.一方,日本の山野には都市緑化植物としての利用が期待される植物資源が豊富に存在します.その一つがアジサイです.アジサイは,観賞期間が長い,病虫害が少ない,低肥料で育つ,樹形管理が容易など,都市緑化植物として必要な資質を有しています.しかしながら強い光や乾燥に弱いといった欠点もあるため,都市緑化植物として利用できる場面が限定されます.これらの環境ストレスに対するアジサイ園芸品種の耐性は低いのですが,野生のアジサイの中にはこれらの環境ストレスに耐性をもつものが存在する可能性があります.園芸品種のもととなるガクアジサイは日本の固有種であり,伊豆半島,房総半島,三浦半島,伊豆諸島に分布していますが,これらの豊富な遺伝資源はほとんど育種に利用されていません.私達は,日本の豊富な遺伝資源を利用して,環境ストレスに強く,都市緑化に広く活用できるアジサイ品種を開発することを目指しています.