滋賀県立大学環境科学部
環境生態学科
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西田 隆義(にしだ たかよし)


役職 教授
研究室 B3-104
最終学歴 京都大学大学院農学研究科博士後期過程単位取得退学(1988年3月)
職歴

京都大学農学部助手(1988年6月〜1996年3月)、京都大学大学院農学研究科助教(1996年6月〜2010年9月)
滋賀県立大学教授(2010年10月〜)

専門分野 生態学
所属学会

日本生態学会、個体群生態学会、日本昆虫学会、応用動物昆虫学会

研究紹介

生態学は、種の分布と個体数を生物間の相互作用によって統一的に説明することを目指す学問分野です。しかし、これまで膨大な知見が集積されたにもかかわらず、現在でもうまく説明することは困難です。わたしはこれまで注目されてこなかった目に見えない2つの相互作用、被食者が捕食を避けるために発動する捕食回避策、および近縁種間に潜在的に存在する繁殖をめぐる干渉に着目しています。これらの要因を取り入れることで、生物群集がなぜ現在あるような姿なのかを統一的に説明することを試みています。

1)捕食回避をめぐる進化生態学
被食者は捕食されないように多大なコストを払って捕食回避しています。この捕食回避がうまく機能すると、捕食がほとんど観察されない場合が生じます。たとえば、野外でバッタを捕まえると、後脚が1本ないことがしばしばありますが、なぜ後脚を失ったのかは不明でした。実は、バッタは鳥に襲われた際に後脚をみずから切り離して捕食を逃れるのです。捕食を逃れた代償が失われた後脚というわけです。これに対して、トノサマガエルと同居しているトゲヒシバッタは、後脚を腹側に曲げて硬直していわゆる「死にまね」をすることで、捕食を免れています。いずれの場合も、バッタは餌としては重要ではなく、教科書的な食物連鎖には登場しません。しかし、捕食者は捕食回避のコストを通じて、被食者に強い影響を与えています。私は、このような場合に、捕食回避のコストが捕食者−被食者系に影響を与え、系を安定化させるかどうかについて調べています。(1986年から現在)

2)外来種による在来近縁種の駆逐メカニズム
世界中のどこでも、人間の生活圏には外来種が満ちあふれて在来の近縁種を駆逐しています。たとえばセイヨウタンポポによる在来のカンサイタンポポの駆逐はその例です。在来種は生息地の環境に適応しているはずなのに、なぜやすやすと外来種に負けてしまうのでしょうか?その答えは、外来種の花粉が在来種の繁殖を阻害することが、正のフィードバックを通じて雪だるま式に強まることにあるようです。こうした繁殖を通じた干渉によって、なぜ特定の外来種が蔓延し近縁種を駆逐するのかを解明しています。(2004年から現在)

3)繁殖干渉による分布とニッチ分割の統一的な説明
近縁な種は地理的な分布が異なったり、異なる生息場所に棲んだり、あるいは異なる餌資源を利用する場合が多いことが昔からよく知られています。この現象はニッチ分割とかすみわけと呼ばれ有名ですが、しかし、現在でもこの現象をうまく説明できる原理はありません。なぜならば、たとえ種間に共通の資源をめぐる競争があっても、あるいは種によって好適な環境に違いがあったとしても、それだけで生息場所や餌利用がきれいに分かれることはまず起らないと考えられるからです。しかし、繁殖干渉が同時に存在すれば、生息場所や餌利用の分離は簡単に生じる可能性があります。こうした考えに基づいて、生物の地理分布、生息場所の違い、そしてニッチ分割を統一的に説明することを目指しています。(2004年から現在)

研究業績



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