当研究室では、地球の過去のようす"古環境"を明らかにする研究に取り組んでいます。地球の環境はどのように移り変わってきたのか?そのメカニズムは?その答えが将来の地球環境変動を予測するためのヒントとなるかもしれません。古環境を復元するために、海底や湖沼にふり積もった堆積物やそれに含まれる"微化石"を調べています。微化石とは、ミクロンサイズの微細な化石のことです。微化石の群集解析や安定同位体比分析をおこない、堆積物に記録された古環境情報の解読を試みています。
1)日本海における最終氷期以降の環境変遷史(1997年以降)
海底コア試料に含まれる浮遊性有孔虫化石を分析し、後氷期の日本海における現在型表層水環境の成立過程を明らかにしました。現在も複数のコアを解析中です。
2)日本海のテフロクロノロジー(1999年以降)
テフラの年代指標としての役割に注目し、海底コアを試料としてテフラの分布や噴出年代を調べています。これまでに、大山起源の草谷原軽石層(KsP)の噴出年代を明らかにしました。また、単一層準の年代指標層として扱われてきた鬱陵隠岐テフラ(U-Oki)について、対比の再検討の必要性を指摘しました。
3)浮遊性有孔虫の生層序学的研究(2006年以降)
北西太平洋三陸沖で掘削されたODP 1150Aコアの調査から、北太平洋で適用可能な更新世の新たな年代基準面として、Neogloboquadrina pachydermaの初産出(約120万年前)とNeogloboquadrina ingleiの終産出(約70万年前)を明らかにしました。N. ingleiの終産出については、下北沖C9001Cコアの酸素同位体ステージとの層位関係を明らかにしました。
4)下北沖C9001Cコアの古環境解析(2007年以降)
地球深部探査船「ちきゅう」によって下北沖で掘削されたC9001Cコアの酸素同位体層序を構築し、同コアが約80万年間をほぼ連続的に記録することを明らかにしました。現在は同コアに記録された古環境情報の抽出を進めています。
5)近過去の環境復元に関する研究(2009年以降)
人間活動が環境に与えた影響を評価するためには、過去100年間ほどの環境の移り変わりを知ることが大切です。土壌・河川・小湖沼などの堆積物を研究材料として、近過去の環境復元とその手法開発に取り組んでいます。
6)琵琶湖セタシジミ漁場における底質表層堆積物粒度の変遷(2012年以降)
琵琶湖固有種のセタシジミは滋賀県の重要な生物資源のひとつです。しかしその漁獲量は1960年代以降、減少しています。その要因を探るため、セタシジミ漁場の底質粒度の移り変わりについて調べています。
7)滋賀県犬上郡多賀町四手における180万年前の古環境復元(2014年以降)
多賀町古代ゾウ発掘プロジェクトに参加させていただき、多賀町立博物館と琵琶湖博物館との協力の下、2014年度卒業研究課題として、滋賀県犬上郡多賀町四手に分布する古琵琶湖層群蒲生層から産出した珪藻化石にもとづく古環境復元に取り組みました。
8)琵琶湖固有種セタシジミを用いた古環境復元手法の開発(2015年以降)
セタシジミ殻の古環境指標としての有用性を検証するため、セタシジミの殻構造を調べています。 |