私の研究室では、琵琶湖の動・植物プランクトンの生活史や個体群動態に関する研究から、湖沼の栄養塩バランスがプランクトンの多様性に与える影響、メタン発酵処理廃液を用いた微細藻類大量培養技術の確立まで、多岐にわたる研究課題について研究を行っています。
1)ミジンコを用いた込み合い応答に関する研究(2001年以降)
オオミジンコをモデル生物として、個体数密度が生物に与えるストレスとそれに対する生物の応答機構を調べています。現在はこの現象に関わる遺伝子発現について解析中です。
2)水田排水が琵琶湖沖帯の生物生産に与える影響の評価(2004〜2007年)
水田排水、いわゆる「代かき水」が琵琶湖沖帯の生物生産に与える影響について明らかにしました。
3)琵琶湖における動物プランクトン生物量の長期変動解析(2008年以降)
滋賀県水産試験場には1960年代から動物プランクトンのホルマリン固定試料が保存されています。我々は、これを分析し過去50年間の動物プランクトン生物量の長期変動を明らかにしました。現在、その変動要因の解析を進めているところです。
4)水田における動物プランクトン2次生産量の推定(2009〜2011年)
滋賀県では、水田を用いた琵琶湖固有魚種の種苗生産に関する研究を進めています。湛水された水田には動物プランクトンが繁殖し、これが稚魚の良い餌となります。我々は稚魚の成長を支える動物プランクトンの生産力を測定しました。
5)気象イベントが琵琶湖の生物生産に与える影響(2010〜2012年)
琵琶湖の植物プランクトン生産が風力や風向、降水量といった気象現象、そしてそれらによって生じる湖水の流動現象とどのような関係にあるのか確かめるための研究を行いました。湖沿岸域に堆積した有機物は分解されて間隙水中に蓄積されますが、湖水の流動がこの栄養塩を沖へ運ぶことによって植物プランクトン生産が促進される可能性があります。
6)淡水真珠養殖復興事業(2012年以降)
草津市にある柳平湖は琵琶湖内湖の一つでびわパール発祥の地です。内湖の環境悪化や安い外国産淡水真珠の流通によって、びわパールの生産は激減しました。草津市は地域振興の一環として真珠養殖の復興のための事業を始めました。我々は真珠貝の成長と環境モニタリングを受託しています。同時に、真珠貝による環境浄化機能の検証も行っています。
7)メタン発酵消化液を用いた微細藻類大量培養技術の確立(2014年以降)
メタン発酵処理は有機廃棄物を安価に処理する最も有用な方法です。しかし、栄養塩を大量に含む廃液が出てしまうのが欠点でした。我々はこの問題点を解消するために、廃液中に含まれるリンや窒素を微細藻類(植物プランクトン)に吸収させることでバイオマスに転換する効率的な方法を開発しています。
8)琵琶湖内湖における生物多様性と栄養塩バランスの関連(2015年以降)
湖沼に生息する生物の多様性は何によって決まっているでしょう。その要因の一つは栄養塩バランスかもしれません。我々は流域の土地利用が異なるいくつかの内湖を対象に栄養塩バランスとプランクトンの多様性の関係を探っています。 |