環境計画学科環境社会計画専攻

秋山道雄

環境社会計画専攻主任

2004年3月末に42名の卒業生を送り出し、4月に44名の新入生を迎えて、今年度が始まった。

1.学生の動き

新入生の44名に加え、2回生41名、3回生41名、4回生42名となっていて、平均して各学年が定員の2名をこえるという在学生数である。4回生は卒業論文を書くというのが卒業までに横たわっている大きなハードルであるが、42名の4回生のうち、休学その他で今年度に卒論を書かない学生が8名いるので、卒論提出予定者は34名となり、例年に比べるとやや少ない。

3月に卒業した学生のうち3名が秋になって大学に現れ、公務員試験に合格したという報告を受けた(それぞれ岐阜県庁・滋賀県庁・消防庁)。就職浪人中の半年間は公務員試験を対象とした予備校に通っていたという。卒業生の話では、在学中に公務員試験を受けても、大学では試験向けの科目が過不足なく準備されているわけではないから、合格率が低くなるのはやむをえないということであった。大学と就職予備校との差異はこのあたりで明確になる。あわせて、在学中よりも浪人中のほうが就職対応は真剣になるとしみじみ語っていた。やればできる学生たちであるから、こうした経験が在学生にどこまで伝わるかがポイントではある。例年の卒論への取り組みはそれほど変わらないから、コミュニケーション過程に一工夫を要する。

2.教員の動き

環境社会計画専攻は、本来スタッフの定員が9名で 環境科学部のなかではもっとも少ないから、各種委員会等へ他学科・専攻と同じ人数を出すとなると、一人あたり担当委員会の数は環境科学部中もっとも多くなる。それが、今年度は転出教員の後を埋められないまま発足したため、スタッフ数は8名となり、さらに土屋教授が学部長に就任しているので、各種委員等の分担では専攻教員にかなりのご負担をお願いすることになった。

スタッフの数が不足していると、教育への影響が生じかねないので、早速今年度には講師の公募を行った。9月1日に締め切った公募には33名の方が応募された。秋から冬にかけて選考が進み、来年度からは若手の講師が新たにスタッフとして加わることになっている。

3.教育・研究活動

環境社会計画専攻の教育は、教員と学生の関係が密な点に特徴がある。新入生5〜6名を一人の教員が担当して1回生前期に表現演習を行うことから始まって、4回生ではこれまた各ゼミに数名の学生が配属となって卒論指導を受ける。卒論の場合は、これに加えて年に3回、全教員・学生の前で報告しコメントをうけるという発表会を行っている。そのため、卒論をまとめることは学生にとってはかなりなハードワークと受け止められているが、これの効果は卒業後になって実感することが多いと聞いている。

当専攻では、教育については専攻会議等で話し合って相互のつながりができているが、研究については各自の関心に応じて独自に進めてきた。もっともこれは各教員の専門分野が異なるため、専攻全体で共同研究を進めるという体制を組みにくかったせいでもある。1995年に大学が発足したとき、日産財団の研究費を得て専攻外のスタッフも加えた共同研究を行った経験があるが、その成果を以後持続させえていない。このあたりは、今後工夫を要する課題となっている。

2003年9月から1年間、中国湖南省の湖南師範大学から毛徳華教授が客員研究員として滞在され琵琶湖に関する資料収集と分析を進められていたが、帰国前に今後洞庭湖と琵琶湖の比較研究を実施できないかという申し入れがあった。この提案は、企画としてまだ形あるものにはなっていないが、専攻の研究体制を構想するひとつの機会ではあるだろう。

今年度の特色は、1年先に大学が独立行政法人化するのを控えて、教育や研究に関する自己評価を進めたことであろう。またこの過程で、専攻の目指す理念や目標について再検討することになった。ちょうど大学が発足して10年目にあたるので、これまでの歩みを振り返る良い機会であったが、検討項目が多様なので議論は来年度に引き継がれることとなる。

環境社会計画専攻とは一体どういう専攻なのか外部の人にはわかりにくいという意見を受けて、当専攻の内容を広報する手立てについての検討が始まった。その一環として、専攻を紹介するWebサイトが近いうちに立ち上がる筈である。また、専攻の内容を反映した資格の取得についての検討も始まっている。環境技術士(補)の資格はすでにあり、これを受験して合格した学生も2名ほどでてきたが、これに加えて合意形成支援士や社会調査士の資格なども、当専攻の内容を反映するものとして注目している。後者はすでに制度化されているが、前者はまだである。今後、合意形成に関連のある他大学・学部と連携し、形あるものにしていけるかどうかが鍵となる。このあたりは、独法化のなかでどう特色を打ち出していくのかという課題ともかかわるので、次年度さらに検討を要するテーマである。