環境動態学専攻この一年

矢部勝彦

1.環境動態学専攻内の動き

 専攻長として最後を迎えるにあたり、なんとか勤めを果たすことができたことは皆様のご協力の結果だと感謝しています。この3年間は長いようであっという間に過ぎた感がします。任期の最初の年は大学院が設置されて博士前期課程の第1期生の修了生を、最後は後期課程修了生を社会に送り出す予定になっています。この3年間はカリキュラムの改革を含めてかなり教育・研究環境が整備されたと言えます。その一方で課題も出てきたように感じられます。以下、これらの中味について報告します。

2.大学院生の動向について

 大学院生後期課程は3年に4名(内1名は海外研修で休学)、2年に6名、1年に5名(内留学生が2名)の計15名が在籍し、日夜博士論文作成を目指して研究に励んでいる。また、前期過程は2年に25名(内1名が休学)、1年に22名の計47名が在籍し、講義への出席、論文作成に励んでいる。したがって、後期課程3年生の中からこの3月には課程博士の誕生が期待されています。しかし、現実はかなり厳しい状況のようです。

 一方、博士前期・後期課程修了予定者の進路先(1月末)は、後期課程で博士論文が未完成のためか3名全員が未定、前期課程で内定者が13名(内訳:公務員に2名、研究所に3名、民間に8名)、博士後期課程等の進学希望が数名、未定者が10名前後である。この結果は就職が厳しい状況ながらも前年度より非常に改善しました。

3.研究科の課題

 大学院の教育・研究体制はオムニバス講義とコミティ制により行われ、これが研究科の目玉になっています。メリットは大きいが、デメリットが顕在化してきました。その例として、多様化した学部教育に対してこれらの講義を受講していない学生にとっていきなり専門的なオムニバス講義を受けても理解できないことが多く、これを補完できない状況にある。また、集団研究指導体制であるコミティ制では、名ばかりの体制になっている面やこれを隠れ蓑に学外活動に励み日常の研究指導が疎かになっているケースも見られるようです。一方で、研究成果を通じての教育・研究指導が疎かになっている例も見られます。このような状況下では送り出す大学院生の就職先確保やその後の発展に禍根を残す可能性があると思われます。また、新たな大学院生を迎える障害にならないかと危惧されます。我々教員は原点に戻って、自分自身の研究姿勢はもちろん、他人任せの大学院生への教育・研究を考え直す必要があると考えさせられます。

4.おわりに

 3月末には専攻長から解放されるに当り、一言反省を含めて述べさせていただきます。この3年間には様々なできごとがあり、特に主張を取り下げて妥協したために最後の年に問題を発生させたことが悔やまれます。今後は一教員として頑張る所存であります。話題を変えますが、平成18年度にはわが県立大学も独立法人化される予定になっています。法人化されることの意味をまだ十分に理解できていませんが、これまで以上に教育・研究および大学運営や社会貢献などが重視されます。また、自己評価・点検や外部評価・点検が加わるとともに研究費の外部からの確保、契約にもとづく任期制の導入など一段と生き残りをかけた生存競争社会へと突入する厳しい局面(ある意味では当然のこと)を迎えることでしょう。手遅れにならないようにこのような局面に対処できる態勢を整えておくことが望まれます。今すぐにも取り掛かりませんか。