環境科学部この一年

土屋正春

環境科学部長

環境科学研究科長

 ここ彦根の地に環境科学部をはじめとする3学部をもって滋賀県立大学が開学したのは平成7年4月のことで、以来、学部、博士課程前期、博士課程後期と続く学年進行期間を経て、一連の教育組織づくりは平成16年3月に「完成」を迎えることになる。

 この間、教員はもちろん、関係者全体の絶大な尽力があったことは言うまでもなく、大学を創るという言葉の持つ深甚な意味合いには、顧みる今に至ってはじめて通じることができるのではないかとさえ思えるものがある。

 まさにこの時に大学設置者である滋賀県知事から県立大学の独立法人化についての積極的な意向が表明されたのは歴史の偶然といえばそれまでだが、大学をめぐる社会状況が大きく転換している中で本学もそのあり方が問われていることの現れだと考えるべきなのだろう。

 全国にあって環境を総合的な視点から研究し、その成果を教育と社会に反映させる学部としては本学部誕生はその嚆矢となるものであったが、当初の構想通りには事態が進んでいないことも事実である。学部の研究と教育の一層の活性化を図らねばならない実情を前にして、この壁を超えるための努力も求められている。

 平成15年度の環境科学部は57名の教員をもって船出をし、そのうち平成7年度就任者は32名であった。この一年間で言えば、林昭男教授、澤田誠二教授、三谷徹助教授の3名が15年3月に退職され、同年4月には、陶器浩一助教授と岡田哲史助教授が就任された。今後も教員の交代は続くことから、長期的な学部運営の戦略を築くことが大きな課題となっている。また、本学部が担う社会的な使命に鑑みて、教育と研究に携わるスタッフの数が本当にこれで十分なものなのかどうかという根本的な問題をも今後は避けて通ることはできない。

 ここで眼を学生に転じると、本学部入学志願者数は数年来ほぼ同様の水準にあったものが、16年度入学試験ではどの学科も例外なく倍率を下げており、学部全体では15年度の5.1倍から16年度の4.2倍への低下となる。この現象は本学のみに限られたことではないにせよ、いわゆる18才人口が確実に減少傾向で推移することを考えれば、カリキュラムにせよ学生との触れあいのあり方にせよ、魅力ある大学づくりに向けた一層の努力が求められていることは明らかである。この点では、全学を通じて環境科学部が休学者が最も多いという事実は、進路を考え直すことがその理由の多くに挙げられていることを考えると、進学希望者に十分な判断材料の提供ができているのか否かの反省を迫るものとも言える。たとえば、この夏に試みられた県立虎姫高校との連携事業などを状況を打開するための方策の一つに育てることが必要であろう。

 このように考えてみると、学部組織の再編をも視野に入れた教育と研究をめぐる長期的な戦略の確立と、それに見合う人材の確保こそが学部の充実のためには必須な要件であることは明らかである。今回、学部年報の編集が大きく変更されたことにつき、大方の賛同が得られたのもこうした内発的努力への備えと言えよう。一層のご協力をお願いする次第である。