環境計画学科環境・建築デザイン専攻この一年

福本和正

環境・建築デザイン専攻長

1) 学生の動向 

 今年度の学部新入生は48人であったが、1人が前期試験頃から連絡が取れず、関係者を困らせている。新入早々休学や退学者が、この3年毎年1人程出ているようで、この原因はどこにあるのか、引き続き注意してゆきたい。

 学部在籍者の221人中8人が休学中で、2004年1月現在で、卒業予定者46人中大学院進学が本学8人他学2人就職先の判明している学生は18人という状況である。

 滋賀県主催、国土交通省近畿整備局等後援による「滋賀らしい環境こだわり住宅」アイデア募集に、奥貫研究室の戸田陽介君他5名が最優秀賞に入賞し、日本建築家協会主催の「水と暮らしと建築」オープンジュリー学生コンペに、柴田研究室修士課程の趙聖民君他6人が優秀賞に入賞している。

2) 助教授2名の着任

 環境・建築デザイン専攻の居住空間領域に陶器浩一助教授が、建築設計領域に岡田哲史助教授が4月1日付で就任された。早く県立大学教員に成りきっていただくことを希望します。大学院環境意匠コースには、これまで6領域あったが、発足時の区分が明確でなく、各教員も不満足であったようで、奥貫コース長による長時間の審議の末、4領域に落着き履修の手引きの改定に間に合った。

 陶器助教授は、本学大学院環境科学研究科の博士後期課程修了の博士(環境科学)の第1号である。

 岡田助教授は、早稲田大学大学院博士課程終了の博士(工学)で、コロンビア大学大学院客員研究員を初めとして、海外でも活躍しておられる。今年度も何度か海外へ出張されており、秋のヨーロッパへの出張は、その一端がわかるので、岡田助教授による報告を、以下に掲載させていただく;

 *<グローバル化するアカデミア>

 今年度着任したばかりで、研究環境も十分に整わぬうちに時ばかりが足早に過ぎていった感の一年だったが、目立った活動としては今年も国際舞台で講演を依頼され、それを行ってきたことにつきる。建築家の世界では、設計した建物が評価されると講演依頼が舞い込んで来る。インターネットの普及で世界中がリアルタイムに繋がってしまった今、国内外の境はない。

 5年ほど前から頂戴し始めた話を、一昨年から数箇所ずつまとめて晩秋に講演旅行を行うようになった。1度の旅行で出られるのはせいぜい20日程度。講演は週に2回までと決め、建築や街を見学することも大切な勉強だから寄り道にも大いに精を出す。街を訪れ、その土地固有の環境に根づき息づく街や建築、人々との巡り合いを享受する体験は、メディアで疑似体験するのとは全然わけがちがう。

 今年度は、19日間かけてスイスと北部イタリアを周ってきた。講演場所はチューリッヒのスイス連邦工科大学、ティッチーノ地方のメンドリーシオという小さな田舎町にある建築アカデミー(世界的に有名な建築家ペーター・ズントーが教える学校)、そしてイタリアのミラノ工科大学とヴェネツィア建築大学である。講演のテーマは、要請により、自分の手がけた建築について語ることがほとんどである。

 講演日はつとめて早めに大学に行く。たいてい世話役がいて、その大学の教育環境やプログラムについて説明をしてくれるが、最大の目的はスタジオ(製図室)を見学することにある。そこで学生の活き活きとした姿を見ると、「この大学は確かだ」と思ったりもする。講演もいつも以上に力が入るというもので、300〜400人の聴衆を相手にしたイヴニング・レクチュアで、気づいてみたら3時間を越えた講話と議論で盛り上がる至福の時間もある。チューリッヒとヴェネツィアではそうだった。

 教育プログラムは、国や地方、もちろん大学によって異なる。それぞれ良い面とそうでない面の両方をもっているから、数校訪れるだけでも学ぶことが多い。アカデミアの世界でも当然のようにグローバル化が起こりつつある今、海外の大学を訪れるたびにわが身を振り返る。日本の大学は何をどうやっていくべきか、まだまだ学ぶべき点が多いことに気づかされる。*

(以上*〜*:岡田哲史助教授 執筆)

3) 教員後任人事の停滞

 講師であった杉元さんが、2002年3月に突然退職され、2003年4月からその後任者の公募の動きが専攻内で始動したが、学部長の慎重過ぎる様子見で停滞し、未だ立ち上がっていない。他学科の昇格と定員・実数の問題とも関連があるとのことであるが、もし杉元講師が退職しなかったら、生じてこない不可解な問題である。

 

 前学部長による「人事正常化プログラム」(案)1⇒6で最終落ち着く予定になっている教員定員につき、各職階の教員一人当たりの学部学生数は、下表のようになる。

 この表によれば、教員一人当たり学生数の最小となるのは、環境生態学科になっており、この案も疑問が残る。

4) その他8年経過による不要品の処分

 建築専攻では、演習や卒業制作等での模型製作が必要であるが、事後の処理が不十分なため、演習室や廊下にもあふれていた。これに故障や旧バージョンのパソコン類があったので、建築デザイン教員の一般研究費の共通経費により処分した。B1,B2棟廊下に分散して置いてあったロッカーは、社会計画専攻の奥野先生の御尽力により、県内の高校に引き取られ、かなりすっきりしたが一部で未だ残っている所もある。