環境動態学専攻この一年

環境動態学専攻長 

矢部 勝彦

1 環境動態学専攻内の動き

 環境動態学専攻長を皆さんのご協力のもと一年間務めることができましてありがとうございました。自分自身の反省を込めて振り返ってみたいと思います。

4月には博士前期課程に21名、後期課程6名の新入生を迎え、博士前期課程では総勢38名、博士後期課程では総勢11名となり、新たな気分のもとスタートしました。そして、10月1日には中山教授の後任として名古屋大学より大田啓一教授が着任されました。

2 カリキュラムの整備

 大学院開設とともに設置されていた講義科目について、より専門性のある内容にするために土壌環境論(川地教授と須戸講師担当)は「土壌・地盤環境論(川地教授担当)」と名称変更し、新たに「化学物質動態論(須戸講師担当)」を開講することになった。

 一方、かねて文部科学省より指摘されてきた大学院の教員専修免許課程については、「環境動態学特別演習I・II」と「環境動態学特別研究I・II」に加えて新たに特別演習と特別研究を開設するには現有スタッフで困難であるという理由から「農業コース」を廃止し、「理科コース」のみとすることになった。これに伴い農業コースに配置されていた開設科目を理科コースの開設科目とし、新たに「植物資源管理論(秋田教授担当)」を加えた。

3 博士前期課程および後期課程の現状

 環境動態学専攻の大学院生は、後期課程2年に5名、1年に6名の計11名、前期課程2年に21名、1年に23名の計44名が在籍し、自らが育つようより広い専門知識とより高度な専門性を求めて鋭意、受講および研究に没頭している。

 一方、博士前期課程2年生の進路については不景気の折か、現在のところ就職希望者8名のうち内定者が3名(公務員1名、民間2名)と非常に厳しい状況にある。これから3月末を目指して学生の努力はもちろん教員の強力な協力体制が必要となっている。

4 憂慮すべき問題の提起

 大学院博士課程には現在、上記のように後期課程に11名、前期課程に44名在籍しているが、後期課程では休学者が2名、前期課程では休学者が9名いる。休学者が多い状況は他大学ではほとんど見られないことをわれわれ教員は知るべきである。これら休学者の中には海外研修の学生も含まれるが、ほとんどは自分の進む方向に悩み続けているようである。人間は悩みながらも生長してゆくわけであるが、また、学生の自主性を尊重することはもちろん大切ではあるが、教員の手助けが必要なこともあることをわれわれ教員は肝に銘じて対処する必要がある。一方、博士前期課程を終える院生の進路については、さらに後期課程に進学する学生を除き、約2/3は就職を希望している。しかし、一期生の修了者から懸念していたが、一期生では1月末で15名中未定が2名、二期生では11名中6名が未定、三期生では8名中6名が未定の状態にある。このように前期課程ではあるが、終了後に就職を希望しているはずにもかかわらず、未定者の割合が増加する傾向にあることは由々しき問題であることをわれわれ教員は認識する必要がある。

5 おわりに

 われわれの専攻では大学院生の教育・研究のためにカリキュラムの充実、退職者等の補充には速やかに対応してきた。しかし、日常の教育・研究指導等に関してはあまりにも放任し過ぎとは言えないだろうか?このような短絡的判断には異論も多く存在することと思う。しかし、一方でわれわれが受け入れている大学院生の自主性を尊重し過ぎて憂慮すべき問題が発生していると言えないだろうか?別の言い方をすると、自主性を尊重した教育・研究指導が可能な学生を受け入れたのではく、厳しくしかも優しく思いやりのある助言や指導を必要としている学生を引き受けているのではないだろうか?今一度われわれ教員は考え直してみる時期に来ていると思われる。このように反省しながらこの一年を振り返ってみることができた。

 最後に、われわれ環境動態学専攻の発展と社会の良きパートナーとなれる人材を多く出せる体制が確立できることを祈念しながら終わりとしたい。