私のこの一年

生物資源管理学科

生物資源生産大講座

上町達也

 ここ3年間取り組んでいたアジサイの系統分類について、ようやく学会発表(上町達也・新庄康代・北風有理・西尾敏彦.2002.RAPD分析によるHydrangea macrophyllaおよびH. serrataの系統分類.園学雑.71(別1)341)できる段階に至った。

 4年ごとに開催される国際園芸学会がカナダのトロントにて開催された。今回、アジサイの装飾花の形質に関する研究発表(Uemachi, T., Kato, Y., Nishio, T. 2002. The characteristics linked to the shape of sepals in Hydrangea macrophylla. 26th International Horticultural Congress Abstracts: 457-458)を行うとともに、学会が企画したいくつかの視察ツアーのうち、ナッツ類の果樹園とナイアガラ植物園を視察するツアーと室内園芸に関する視察ツアーに参加した。ナッツ類の果樹園では、非常に多くのナッツ類を世界中から集め、育種、接ぎ木試験、栽培試験を行っていた。育種目標として、ナッツの収量や品質の向上、耐病虫害性の付与、庭木としての観賞価値の向上などがあった。簡単に育種と言っても、多くのナッツ類では播種後、果実が得られるまで4?8年かかるそうであり、気の長い作業である。

 ナイアガラ植物園はもともと園芸学校として創設され、規模を拡大し、1990年に植物園として一般人にも開放したものである。従って、約40haの広大な敷地に栽植された様々な植物を敷地内の寮に住む学生(全寮制)が管理している。今回の園内の案内も学生が分担して行っていた。ハーブ園、ロックガーデン、宿根草園、一年草園、いろいろな形・大きさの花壇を配置した庭園(parterre garden)等、どれも美しかったが、学生達が自由にデザインした野菜園が、遊び心に富み生き生きしておりもっとも印象に残った。

 室内園芸に関する視察ツアーは、バイオフィルターによる室内の空気の清浄化がメインテーマであった。室内の一角の壁面を自動かん水装置を付けたヘゴ板のようなもので覆い、そこにシダ類、コケ類、サトイモ科観葉植物、ランなどを植え付ける。強制換気により室内の空気をこの植え付け板に通すと、室内の様々な材からでる有害な化学物質が植え付け坂内の微生物により分解される。つまり、この装置は、バイオフィルターとしての機能と室内緑化としての美を提供するということである。外気を室内に取り入れて換気を行った場合、外気を暖める(冷ます)必要があり、エネルギーや光熱費がかかるが、この装置を用いるとこれらのエネルギー、光熱費が節約できるとのことであった。このツアーでは、この装置を実際に取り付けているオフィスや、フィルターとしての機能の向上に取り組んでいるゲルフ大学の研究施設を視察した。このバイオフィルターの研究については、宇宙ステーションでの利用を考えているNASAとの共同研究ということもあり、かなりの予算がついているらしく大学の施設、設備は驚くほど充実していた。またこのツアーを通して、室内の空気からの有害物質の除去と言う問題が、私の想像していた以上に欧米では関心がもたれているという印象を受けた。

 今年度の私の担当する4回生3人には、遺伝子の単離や培養系の確立といった卒業研究に取り組んでもらった。どれもなかなか順調には進まず大変であったが、学生達はめげずに頑張って取り組んでくれた。実験がうまくいかないで、学生が落ち込んでいるとき、本来なら慰めたり励ましたりせねばならないところ、つい同じように私も落胆した表情をみせてしまう時があり、反省している。以後、気をつけていきたい。