環境社会計画専攻この一年

専攻イメージをどのように伝えるのか

環境計画学科

環境社会計画専攻主任

土屋正春

1.頭痛のタネ、オープンキャンパス

 例年のように今年度もオープンキャンパス(以下、OCと略記)が実施された。じつは、環境社会計画専攻にとって、この催しは頭痛のタネなのである。

 当日は全体の説明会に続き、受験生たちは見学を希望する学科や専攻に分かれて見て回ることになる。だが、環境社会計画専攻にとってはここが難関なのである。要は、18才を中心とする彼らが「パッと見て分るもの」を準備し、提供することが極めて困難である、ということに尽きる。

2.何が困難なのか?

 全国的にもそう数が多くはない環境系の学部であるが、建築デザインはもとよりのこと、自然の生態やら、農産物の研究やら、本専攻の他はどれもわかりやすいことこの上ない。こうした背景にはこのデザインの建物がよい、あるいはまた、この品種改良で農家の収入が増えるなどなど、何を学ぶのかをめぐり具体的なイメージが獲得しやすいのだ。これに比べて環境社会計画では「持続的な社会を目指す」ということに対応し、彼らにうまくアピールする「出し物」がないのだ。しかし、今や大学の場でこのテーマを外したら21世紀の展望は得られない。

3.受験生側の問題

 では専攻の内容だけが問題の原因になっているのかというと、そうばかりでもない事情がある。例年のOC実施の時期はまだ受験生達が志望先を明確にはしていない時期なので、環境社会計画専攻のことを深く知りたいという動機で訪れる者の数は極めて少なく、どうしても分りやすい学科や専攻の印象を強く抱いて家路につくということになる。

 この点への対応を考えるべきだということで、今年度は来場者にアンケート調査を実施した。展示や解説の感想などを尋ねる簡単なものだったのだが、やはりボンヤリとした印象しか与えられずにいたようである。中には期待通りの内容なので必ず合格したいと記したものもあったが、これが極めて少数派であるというのが残念なばかりである。何か方法はあるのだろうか。

 高等学校での講演の機会があったので、いろいろとやりとりをしてみたのだが、やはり「何を勉強したいか」を深く考えている生徒は少なく、意識の大半は「どの大学なら入れるか」に集中しているかのごときであった。ある意味で、ボンヤリには我々の手の及びにくいそれなりの背景がある、ということでもある。

4.新入学生の見方は・・・

 では、合格して入学した新入生は「ボンヤリ」が「ハッキリ」に変わっているのだろうか。

 本専攻ではこうした課題に対するためにも1回生配当科目として「政策形成・施設演習」を開設した。この科目の内容は、廃水や廃棄物の管理施設などの現場見学、UNEPなどの研究組織の訪問、環境省からの出前講義などとならび、経済学の視点やまちづくりの視点から社会を見直すという演習授業から成り立っている。

 このクラスでのアンケート調査の結果からは、敷地が広くてゆっくりしている雰囲気がよい、教員と学生の距離が近くてよい、図書館が早く閉館するのが困る、講義のスタイルが全く不統一(!)なので困る、などなど全体的なものから、この専攻の意味がだんだんわかってきた、というものまで様々である。専攻での学習と社会とのつながりを実感させることには成果を挙げていて、ここで初めて専攻の具体的イメージを大まかながら獲得しているらしいのだ。

 いかにして専攻イメージ獲得時期の前倒しを実現するか、これが今後も最大級の懸案事項であることは確かなようである。