私のこの一年

生物資源管理学科

生物資源循環大講座

高橋卓也

【教育】

 今年から新たに担当した「環境科学概論2」では、「概論」というものの位置付けにずっと頭をひねりどおしであった。オムニバスの3回分を担当し、「更新性天然資源の経済学」、「地球温暖化の経済学」、「環境とビジネス」という3つのテーマをそれぞれ取り上げ、「興味をもってもらうこと」と「これからの学びにつながること」を最大の目標として内容を組み立てた。環境生態、環境計画、生物資源管理3学科の学生の皆さんに将来的にどうしても知っておいてほしいこと、考えてみてほしいことは、たくさんあって、なかなか内容が絞りきれなかった。くわえて、専門の科目で詳しく学ぶ事の表面的なところではなく、本質にもふれてほしいとも思っていた。というのも、先述のテーマについて、これから専門の科目の中で学ぶ機会のない学生さんは相当数いて、彼らが今回の機会を逃すと環境問題の基本的なこと・論点も知らず卒業してしまう可能性は大きい。今年度のところは学生さんの興味を多少なりとも喚起することができたのではないかと考えている。

 昨年の着任以来担当の授業「農産物価格流通論」、「農業政策論」等については、具体性をもたせることに腐心した。とくに「農業政策論」については県庁からの客員教員の近藤月彦氏にお願いして、滋賀県の森林政策、農業政策の現状と課題について講義していただいた。しかし、まだまだ黒板授業であることは否めない。私のフィールド経験をもっと増やし、滋賀県の事例で教える事ができるようにしていきたい。

【研究】

 滋賀県の公社造林について、伊吹町、朽木村で聞きとりを進めている。主に昭和40年代から50年代にかけて、滋賀県においては、県と下流自治体の出資による滋賀県造林公社・びわこ造林公社が民有林の雑木山にスギ・ヒノキを植林していった。当初の見込みでは、林業による地域振興を目論んでいたのだが、木材価格の低迷により木材生産による収益状況は大変苦しく、収穫期が来ても切るに切れない状態となっている。全国のほかの府県でも同様の状況であり、解決策は見えてないといってよいだろう。新事実や解決策がぱっと見つかるものではないかもしれないが、追いかけていく予定。

 企業の環境マネジメントについて、数年前に実施したアンケート調査の結果を別の手法で再び分析している。というのは、環境マネジメントについては、あまりに単純に語られているように思うからである。つまり、「ISO14001をとっているからよい」、「リサイクルをしているからよい」とかいった個別の活動にのみが着目されている。それだけではなく、個別活動の背後にある企業という組織の社会・経済的ダイナミックスを捉えること、それと個別の活動の有効性を問い直すこと、こういったことをやりとおさなくては、もっと高い段階の環境マネジメントを追求するのは不可能だと思う。今年度は県の工業技術総合センターと協力してアンケートを実施した。その結果の分析もくわえ、考えをまとめてゆきたい。

(研究発表)

「環境管理の『官僚制化』が環境パフォーマンスに与える影響について: ISO14001の有効性を考えるために」環境経済・政策学会 2002年大会.

「森林認証についての社会科学的研究の動向: どのような切り口が可能か」2002年西日本林業経済研究会.

「カナダ林産業者が森林認証を取得する動機は何か: ISO,カナダ規格協会(CSA),森林管理協議会(FSC),FORESTCAREの4種の認証について」日本林学会第113回大会,2002年.