感 無 量―― 感謝をこめて――

環境計画学科 環境・建築デザイン専攻

建築計画大講座

柴田いづみ

●プロローグ

「青年老いやすく、学成りがたし。一寸の光陰、軽んずべからず。」朱子(朱子学の創始者1130−1200)の詩の一節ですが、21世紀も3年目に入り、私の滋賀県立大学も7年目を終えようとし、父から良く聞いていた一節ですが、この歳になって実感しています。父は86歳、まだまだ元気です。江戸時代からの儒学者の血は、確実に伝わっているようです。

●内井先生を偲んで

 限られた人生に、後どのくらいの事が出来るのだろうかと考えざるを得ないのは、8月3日に急逝された内井昭蔵先生の「追悼の会」と「追悼展」をまとめる事で、先生の偉業を再確認することとなったからとも言えます。この2つの企画は、内井先生の提唱なさったマスターアーキテクト制度の応用ともいえるステップで進められました。マスターアーキテクトの教員達と、ブロックアーキテクトの学生達とのコラボレーションとしてMABA(マスターアーキテクト、ブロックアーキテクト)会議にあたる合同会議で決定がなされていき、学生達は、グループ[uchiism55]を結成し、コアメンバー(磯部、井上、三木、松岡)の4名にプロデューサー,資料収集、2D,3D班と分かれた総勢80名からの参加を得て成功する事ができました。

●バリ島にて

 2つの企画は成功したものの疲労困憊の2002年となり、年末から2003年の年始にかけて、リハビリにバリ島に行ってきました。環境省の方の紹介で、バリ島のマングローブ情報センターを訪問しました。JICAとして、汚染された海岸線をマングローブで自然再生させていくものです。このセンターの活動のおかげで、既存のマングローブの価値も認識されたという事でした。海岸線の汚染原因は、えびの養殖の為のマングローブの伐採と河川に捨てられた家庭ゴミ、海岸に打ち寄せる船から投棄されるゴミというものでした。バリもゴミで埋もれつつあることを実感しました。えびの養殖が失敗に終った土地にマングローブの苗を植えて自然再生してきます。すでに大きくなったマングローブの林間デッキを渡っていくうちに「かわせみ」を見ました。それも行きと帰りと2回ですが、それが、視察の方々を案内しても10回に1回ぐらいしか見れないし、2回も見た人は始めてだそうです。12月31日、年の最後のラッキーでした。でも、鳥達が少なすぎると感じました。再生が進み、もっと多くのいきもの達に戻ってきてもらいたいと思います。 泊ったホテルは、バリの発祥と言われる山間部のウブドにあり、渓谷に点在するビラ形式で、熱帯の緑に囲まれてすばらしいのですが、鳥がいないのです。いわばジャングルの中ですから、もっと鳥や動物がいても良いはずですが・・・レイチェル・カーソンの「沈黙の春」を思い出してしまいます。雨季なので、いないのかも知れませんし、もっと山奥にはいるのかもしれません。神の島、南海の楽園の(はずの)バリ島での感想です。

●2003年1月

 大阪駅前24haのコンセプトコンペをゼミ生と仕上げました。世界で6000組の応募です。テーマは[Mother to Children]。良い成果を祈っています。

●2003年3月

 内井先生追悼東京展(3月18−26日)の為に学生達の[uchiism0749]がスタートしました。0749とは、彦根の市街局番で地方からの発信を意味します。建築学会のギャラリーでは、11月の追悼の会と追悼展の報告展示。中庭には直径1.5mから3m、高さ6.5mのテントとワイヤーの円柱を作り、その中に先生のスケッチを、ホール中庭側廊下には先生の作品を展示しました。

●水フォーラム

 3月19-21日、世界水フォーラムでは、「津田内湖再生」-環境FWから市民会議へ-というテーマで、FWでの成果の報告、市民会議の活動、OTRC(近江八幡津田内湖リサーチコンプレックス)の活動報告を12枚のパネルと模型、ビデオで展示をしました。

●エピローグ

 2001年の末にAACA賞(日本建築美術工芸協会主催)の奨励賞をいただき、2002年には、、グッドデザイン賞、JIA(日本建築家協会)の環境建築賞をいただきました。感謝と共に感無量の事の多い1年でした。

学生グループ「uchiism55」 

内井昭蔵先生追悼の会・追悼展、準備作業風景



photo by:柴田 いづみ