京都CDL(コミュニティ・デザイン・リーグ)

中村 康太郎

大学院環境科学研究科 

環境意匠コース

21世紀の幕開けと時を同じくして出現した京都CDL。まず、京都CDLの設立の背景にある京都を巡るいくつかの状況を記しておく。(1)京都に対する問題の立て方の硬直化。(2)問題硬直化への慣れと思考の怠慢。(3)硬直化問題の圧倒的流布によるファッション的状況。この状況に待ったをかけるために出現したのが京都CDLである。そこで京都CDLが目指すものは?まず、一番強調するのは、実際に都市を歩き、様々な対象をじっくりと見つめることである。また、都市経験をする主体が多様であることも重要視し、それぞれの視線、考え方が絶対的な地位を持つのではなく、相互に批判できる状況こそが望ましいと考える。これらのことを前提に、新たな京都像、未だかつて見たことの無いような京都地図を描き出そうというのが京都CDLの狙いである。

 次に活動概要とその特質について述べたい。活動主体となっているのは、京都、滋賀立地の大学に属する研究室を単位(チーム)とし、それぞれが各調査地区を持つ。参加研究室の共通項は「京都に関心がある」というだけである。粗雑な設定に感じるかもしれないが、ここには視点の多様性を獲得する狙いがある。チームの研究分野はそれぞれ異なるので、視点も異なってくる。また、京都といっても関心のある地域も変わってくるので、担当する調査地区の選択にもチームの京都に対する視点が大きく反映されることになる。現在、京都CDLは15大学、24研究室により成り立っています。滋賀県立大からは、松岡先生、山根先生をユニットマスターとし、環境科学部、人間文化学部の1回生からM1まで25名が参加しています。

 調査地区は京都全領域を網羅していく方向であるが、担当地区の特性を把握し、何らかの提案をし、具体的実践をするに至るには1年、2年では難しいことである。そこで、活動の持続性を要求されてきている。個人個人では、続けるのは難しいが、研究室は存続していくわけで持続的に担当地区に関わっていくことを可能としている。県立大チームでも学年を越えた縦の関係を築き、蓄積されていく調査データ、経験を後輩へ伝えていくことを常に意識している。

 具体的に、各研究室の研究成果をいかに伝えるか。京都CDLのLeagueのLであり、チーム同士が何かを競い合うという意味が込められています。各チームは地区調査、地区分析、地区提案を行うわけで、当然それらを他のチームと競い合うことになる。勝ち負けの基準は不明瞭でありますが、競い合うという気持ちで生まれる緊張感が発生するのは確かである。この緊張感を持続させてくことが、「視点の多様性」を形骸化させないための鍵となっています。これまで、発表の場としてのシンポジウムが4月(春季リーグ)、10月(秋季リーグ)に開催されてきました。CDL内のみならず、一般市民も参加し、成果を発表、公開してきています。このシンポジウムでは優秀な発表に対しては表賞し、日頃の鍛練の成果を試す試合の場となっています。

 私達、県立大チームは1年目、御所の東から堀川通りまでの地域を調査対象とし、駐車場、オフィスビルに着目し、景観への影響とコミュニティ空間への変換を提案しました。2年目は京都駅周辺を調査対象地とし、街に散在する祠に着目した。都市の近代化がもたらした祠の領域に生まれるズレ、空間の可能性を今年度も引き続き調査している。結果として、1年目は環境変換装置するという発想、コミュニティ空間の構築への積極性が高く評価され優秀賞を受賞。2年目は、祠を都市・路地空間の魅力を形成する要素として捉える視点を評されリーグ賞を受賞している。私達の取り組みに一貫しているのは、滋賀県から参加という距離を意識し、京都の人にとっては日常化されている風景から問題を切り取っている点である。様々な研究室が水平的な情報交換を可能とするネットワーク、CDL。京都にはすでに大学コンソーシアムという大きなネットワークがありますが、その中でも注目される新しい組織となっています。府外から参加する私達は、ネットワークの一役を担うと共に、常に新たな視点で波紋を起こすチームでいたいと考えています。


<参加研究チーム>

京都大学布野研究室、京都大学竹山研究室、F-OB(布野研OB)、京都大学歴史研究室、立命館大学平尾研究室、立命館大学リム研究室、京都女子大学井上研究室、京都造形大学渡邊研究室、京都工芸繊維大学船越研究室、平安女学院短期大学中林研究室、平安女学院短期大学室崎研究室、文教大学小林研究室、龍谷大学広原ゼミ、京都嵯峨芸術大学大森研究室、滋賀県立大学松岡研究室・山根研究室

<連絡先>

松岡拓公雄研究室ホームページ

http://www.m-lab.gr.jp

京都CDLホームページ

http://www.kyoto-cdl.com