滋賀歴4年目のタイチョーとカイチョー

環境計画学科・環境社会計画専攻

環境社会システム大講座

近藤隆二郎

 今年の報告としては、まずはずっと調査を続けている南インドのオーロヴィル(Auroville)に3月に3週間ほど滞在したことである。なかなか論文やまとめたものが出せないのでいるのがもどかしく、さらに行くたびに変わってしまうので、相手が鵺(ぬえ)のようで大変な反面、エコビレッジとしての胎動を感じられることはとても刺激を受ける。情報がほとんど無い日本に向けて発信していくことが研究者としての義務ではあるものの、オーロヴィルの人たちと日本での出版等の話を相談すると、「何とすばらしい、是非に」という人と「来たいと思う人が来れば良い」という意見があり、これまた考えてしまう。5月に『宇宙船地球号』(テレビ朝日系)で30分番組として紹介されたが、編集方針等についても議論があり、本当のコアとなる哲学的な思考面は希釈化し、エコテクノロジーの面を全面に押し出したモノだった。理解と伝達ということの難しさ、とくに研究とは一面を切り取って示さざるを得ないので、そのあたりの難しさをひしひしと感じている。ただ、現在は客観的なデータをどうにかして整理解析しようともがいている。そんな客観的データから浮かび上がる像もあるだろう。いずれにせよ、まとめて伝えることに自分を律していかなければ。日本でも各地でエコビレッジづくりがはじまっているので。

 滋賀県下のNPOとの実質的な関係(大学人ではなくて個人として)も出てきた。まずは、『ひこね自転車生活をすすめる会』を立ち上げて代表に就任した。このNPOは法人格取得を目指さず、むしろ5年で解散しようと決めている。継続のために無理をするNPOではなく、決めたミッションを具体的に実践しようという勢いの表れである。現在は自転車マップづくりなどを進めている。また、野洲を中心とする『NPO法人 環境を考える会』の理事にも就任し、市民講演会の企画などにかかわっている。いずれも、メンバーに行政職員もいるが、活動としてはいろいろとネットワークを駆使しながらワイワイとしている点がおもしろく、楽しい。

 また、湖東地域振興局と進めている『近江中山道ミュージアム構想』なども、独自に数年前に記した「道博物館構想」が現実のものとしてかたちとなるのは感慨深い。電子掲示板におけるまちづくりの可能性を実験している『e〜まち滋賀:ええとこたんけんたい』(http://cgi.emachi.jp/)の隊長もしているが、これは滋賀のいろいろなマニアックな情報についての交流を行っている。8月開始で、この1月に2000件の書き込みを突破した。その関係で、様々な情報を知りつつあり、熊鍋やイワトコナマズを食べたりウロウロ滋賀を探検させてもらっている。滋賀歴4年としては貴重な情報源である。

 研究論文としてはゼミ生が次の4本を発表。橋本慎吾・近藤隆二郎(2002): 河岸空間と周辺コミュニティの関係性を再生するための過程に関する研究―ヴァラナシ(INDIA)におけるDev Diwali祭を事例に―, 環境システム研究論文集 Vol.30, pp.401-408/曽根真紀・近藤隆二郎(2002): 市民参加型プログラムとしてのヨシ刈りとヨシ松明祭りに関する研究―生態学者と生産業者の意見に注目して―, 環境システム研究論文集 Vol.30, pp.183-189/近藤紀章・近藤隆二郎(2002): 観光論における「環境の概念」の特徴と変遷に関する研究, 第30回環境システム研究論文発表会講演集, pp.161-168/津賀高幸・近藤隆二郎(2002): 住民参加型の環境管理方法にとしてのアダプトプログラムの特徴, 土木計画学研究・講演集No.26-108 自分では、次の3本を原稿執筆。「持続可能性の環境社会システム」( 「持続可能性の環境学(仮題)」所収予定)/「紀北の地域的巡礼地」(「街道の日本史35−紀ノ川と大和街道−」所収予定)/「環境理念・環境論の多様性と展望,」(「(仮)環境システム研究のフロンティア」所収予定)。

 どうせやるならと小学校のPTA会長も引き受け、小学校側の運営やプログラムに近く触れることができて大きな収穫に。小学校の授業プログラムってどうしてあんなにおもしろいのだろう。大学の教育プログラムの貧弱さと中学・高校の不連続性を痛感。