私のこの一年

生物資源管理学科

生物資源生産大講座

入江俊一

【教育・その他】

 去年に引き続き但見教授と共に生物資源管理学実験IVを担当した。本年度から基本的なDNA実験技術の習得を目的とした実験を行った。実験自体は学生に興味を持って行ってもらえたのではないかと思うが、受講者多数のため実験器具の不足などの問題も生じた。設備の拡充を含め、今以上の工夫が必要と感じた。

 本研究室に初めての専攻生を迎えた。彼らにとっては初めての本格的な研究生活の始まりであり、大学生生活4年間の締めくくりである。彼らが良きスタートを切る(あるいは総括する)ことができたかどうか?私への評価を含めて何年か後に聞いてみたい。

 香川大学農学部へ招かれて講演を行った。講演後に親交ある研究室の皆様に酒席を設けていただいた。が、酒宴が終わった深夜に研究室の大学院生達は再び実験を行っていた。大学院生として珍しい振る舞いでは無いのだが、士気の高さに正直少し驚いた。本学の学生達へ彼らに負けぬ情熱を伝えねばならないと強く思った。

【研究】

 白色腐朽菌と呼ばれる一群の担子菌(シイタケ、ヒラタケ、マイタケなど)は木質中のリグニンや環境汚染物質であるダイオキシンなどの難分解性物質を分解可能なリグニン分解酵素を生産する。本研究室では白色腐朽菌の能力を遺伝子工学的に解析する事を大きな目標に据えている。平成14年度から「SAGE法を用いた担子菌におけるcAMP誘導性遺伝子発現プロファイリング」と「リグニン分解酵素、マンガンペルオキシダーゼ高発現シイタケ株の開発」の2大(?)テーマをスタートさせた。

 (財)岩手生物工学研究センター・水稲プロジェクトとの共同研究「いもち病菌付着器形成に関与するcAMP誘導性遺伝子発現プロファイリング」が一応の完成を迎えた。これも同センターの寺内良平主席研究員、松村英雄主任研究員、齋藤宏昌研究員をはじめとする水稲プロジェクトの皆様のおかげである。研究成果は3rd International Rice Blast Conferenceにて発表した。論文を現在投稿中。齋藤宏昌研究員は今年1月よりドイツのマックス・プランク研究所へ移動されましたが、いっそうの御活躍を祈っております。

《学会発表》

  1. Toshikazu Irie, Hideo Matsumura, Ryohei Terauchi and Hiromasa Saitoh. SAGE (Serial Analysis of Gene Expression) revealed the cAMP-inducible genes involved in appressorium formation of Magnaporthe grisea.. (2002) 3rd International Rice Blast Conference
  2. 柳田直樹、桑原和也、入江俊一、但見明俊. カモジグサがまの穂病とその類縁菌について. (2002)日本植物病理学会関西部会
  3. 齋藤久美子,渡辺久敬,入江俊一,佐藤利次. カルボキシン耐性遺伝子によるシイタケ(Lentinula edodes) sdi1の相同組換え. (2002) 第2回 糸状菌分子生物学コンファレンス
  4. 小西良司、入江俊一、長谷川博. イネのセシウム抵抗性突然変異株の翻訳開始因子(eIF-5A)遺伝子. (2002)近畿作物・育種研究会第154回例会

《科学研究費補助金》

  1. 「SAGE法を用いた担子菌におけるcAMP誘導性遺伝子発現プロファイリング」、研究代表者、若手研究(B)、平成14年度
  2. 「環境ストレス耐性に関連した翻訳因子の同定とその発現機構の解析」、研究分担者、基盤(C)、平成14年度、(研究代表者;長谷川博)

《講演》

  1. 入江俊一. 「私の研究生活-担子菌きのこの分子生物学」 (2002) 香川大学農学部