私のこの一年〜湖沼環境実験施設に研究室を構えて〜

環境生態学科

後藤直成

 私が所属する物質循環研究室は、本館から湖岸道路を越えた琵琶湖湖畔に位置する湖沼環境実験施設内にある。湖沼環境実験施設は琵琶湖とその集水域の動態を環境科学的に教育・研究するための施設で、それらを支えるためのさまざまな分析機器・観測設備がある。また、本施設は実習調査船「はっさか」を有し、琵琶湖沿岸帯から沖帯、そして、湖面から湖底に至る、琵琶湖の隅々までの観測が可能である。これらの機器・設備を利用して、物質循環研究室では主に、生元素(炭素、窒素、リン、珪素など生物を構成する元素)の動態を生物地球化学・環境科学的に研究している。

 本研究室は、年々、所属する学生数が増加してきており、平成15年度には学部3回生から博士後期課程3回生まで、全ての学年の学生が揃い、総勢12名の大所帯となる予定である。その中で、大学院生は学外から入学してくる者が多い。これは、湖沼環境実験施設と物質循環研究室が学内のみでなく、学外にも広く認知されていることであると、好意的に受け止めることにやぶさかでない。もちろん、これは先人と現スタッフ方々のご尽力によるものであることは言うまでもない。今後は、期待に胸ふくらませて研究室に入ってきたこれらの学生を、いかに社会に貢献できる人材に育てていくか、そして、いかに琵琶湖の研究施設として優れた研究業績を残すかが、本研究室の大きな課題であり、本施設の将来を決める。

 しかしながら、この一年を振り返ってみると、充分かつ良質な?学生指導ができたとは言えない(物理的に快適な研究環境を提供することではできたと思うが)。これは、私の学生指導の経験不足と外部機関から得た研究補助金に関わる研究に追われたことが大きな原因であったと考えている。施設の研究機器・設備をさらに充実させるべく、さまざまな研究補助金を得ると、それらの責務に対する研究に追われ、学生に係わる時間が減る。とは言え、お金が無ければ、大所帯である本研究室の学生に充分な研究環境を与えられず、また、分析機器を良好な状態で維持していくこともできない。とても、悩ましい問題である(本研究室よりも多くの学生を抱え、多大な研究費を得ている先生方はどう対処しているのだろうか?うまい知恵があればご教授をお願いしたい)。しかし、悩みこそ発展の原動力であると考え、自分なりの答えを模索していきたい。

 本研究室ならびに湖沼環境実験施設の成長は滋賀県立大学の発展にも少なからず寄与するはずである。教育・研究に競争原理が導入されている現在、学外に向けた情報発信、つまり宣伝が重要になってくるが、それに耐えるだけの実績を施設として上げる必要がある。また、いずれ外部評価が導入されるとすれば、現在の状況のままでは、淘汰の対象に上げられる可能性も否定できない。非常に小規模な本施設が他の教育・研究機関と対等あるいはそれ以上の評価の受けるためには、やはり、琵琶湖とその集水域の研究施設として、他にない、独自の発展が必要であることは施設に関わる教員らに一致した意見である。では、「独自の発展」のために、具体的にどのような教育・研究活動を展開していくのか?次年度からは、本施設の存在意義を考えつつ、この課題に対する解答を早急かつ慎重に導き、その方向へと前進して行かなくてはならない。

 最後に、本施設では、毎月の定期観測のデータをホームページ上で公開し、学内外から好評を得ているが、平成15年度からはさらに多くの琵琶湖水質のデータを定期的に報告したいと考えている。また、学内外の施設利用者の教育・研究を補助すべく、施設内の環境整備・維持に努めたい。是非、多くの方々に本施設を利用していただき、成果を上げていただきたい。もちろん、私も。