私のこの1年
環境生態学科
地球環境大講座
伏見碩二
水資源環境の変動調査のため,2002年は8月にモンゴルとシベリア,9月〜11月にはブータンとネパールに行きました。内陸アジアの永久凍土や氷河が急速に溶けだしているからです。ブータンやネパールでは氷河湖(写真1, 2)の決壊による洪水被害が発生し,モンゴルではフブスグル湖岸の森林や町が水没しています。原因は温暖化のほかに,モンゴルやシベリアでは人為的な森林火災(写真3, 4)が大きく影響していることが分りました。
氷河時代に形成された永久凍土や氷河が溶けることによって水量が増えている現在ですが,将来は貴重な水資源の元である氷河や永久凍土が少なくなることを示します。21世紀の後半には,内陸アジアに源をもつ黄河・揚子江・メコン河・ガンジス河などの大河川河口域の大都市にも水資源問題をひきおこすことでしょう。河川水量の減少と温暖化による海水位の上昇で,河口域の地下水が塩水化する影響もくわわるのです。自然・社会環境が大きく変動する時代になります。
昨年のアジアでは,地球環境問題と同様に,アメリカなどによる社会的騒動がつづきましたが,今年こそはアメリカがまた騒ぎはじめたが社会環境の好転を期待しつつ,アジアの自然環境をみつめていきたい。
写真説明
1)1994年に洪水をおこしたブータン北部のルゲ氷河湖の祈祷にこられたブータン王女と(10月1日)
2)洪水をおこす可能性のあるネパール北部のイムジャ氷河湖(10月27日)
3)モンゴル北部のフブスグル湖周辺の山火事(8月4日)
4)東シベリアの広域的山火事の航空写真(8月16日)