フィールドワークの特集にあたって

秋山道雄

環境フィールドワーク委員会

 今年度の学部報は、主として2つの理由からフィールドワークの特集を組むことになった。ひとつは、開学以来8年間にわたってフィールドワークを続けてきたので、その成果を書物にまとめ、出版しようという企画があったことによる。この企画は、前年度のFW委員会ででたものであるが、それが今年度に引き継がれることになった。書物の構成内容についても一定の案が練られていたが、それを一挙に書物のかたちにもっていくのではなく、まず学部報へ試論を載せ、それを改良したものを書物にしてはどうかという議論が今年度のFW委員会でまとまり、こうした特集を組むことになった。

 もうひとつは、書物をまとめるにあたっては、まずこれまでのフィールドワークを総括し、その成果を反映させるべきではないかという提案があり、FW委員会で検討したところからきている。開学後1〜2年は、フィールドワークが終了したあと総括のシンポジウムを開催していたが、近年はそれが行なわれていないので、これを機会に実施しようという決定をみた。そのシンポジウムの結果を学部報で紹介すれば、シンポジウム当日参加できなかった方々にも検討材料として頂くことが可能となる。

 こうしたいきさつで特集を組むことになったが、書物にまとめる際、とりあげるグループは自己申告制とした。それに応募されたのは7グループであったので、このグループの記事を中心に特集を編成している。ここでは、各グループのFWの実践内容が記事の主体をなすよう依頼した。

 また、今年度のFW委員会では、フィールドワークのあり方を見直す議論を進めている。昨秋の湖風祭で行なったシンポジウムもその一環であるが、単年度の達成効果を検証するだけでなく、フィールドワーク全体の見直しを時系列的な経験をも対象に加えて展開しようとしてきた。まだ、開始初年度にあたるため、検討作業は微々たるものではあるが、シンポジウムでの報告と討論は、これを実行していくためのよい材料となっている。

 紙数の関係で、シンポジウム全体を今回の特集には載せることができなかった。FWI・IIの各グループが報告した前半部分は割愛し、後半の全体討論の部分のみを掲載している。そのため、前半の報告を聞かれていない方は議論のつながりがいまひとつ鮮明でないと感じられるかもしれない。そうした限界はあるにせよ、シンポジウムで出された問題がどのような領域をカバーするものであったのかは理解して頂けるはずである。前半部分も含めたシンポジウム全体の原稿は、来年度にフィールドワークのあり方を検討する際の重要な材料となるので、まとめたものを配布する手筈を整えておきたい。

 FW委員会では、フィールドワークのあり方を開学当初の理念に立ち返って検討することにしている。その一環として、本特集では井手委員による私案を掲載した。私案とあるように、これはFW委員会の意見をまとめたものではなく、検討のための資料提供という位置づけで提示した。これをたたき台として、賛否両論を含めた活発な議論が展開されることを期待したい。FW委員会でも、井手私案についてはまだ十分な議論をしていない。来年度はこのあたりから検討作業が始まることになる。

 昨秋のシンポジウムは、湖風祭への参加というかたちをとり、学部内の関係者に対象をとどめるのではなく、一般に公開した。あわせて、コメンテーターとして環境科学部の自己評価委員2名に参加頂いたほか、工学部と人間文化学部の自己評価委員にコメンテーターの紹介を依頼した。両学部の委員はともに趣旨に賛同して頂き、その結果、工学部からは来田村實信助教授、人間文化学部からは土屋敦夫教授がコメンテーターとしてご参加頂いた。 学部をこえた視点からフィールドワークを見直す機会になったわけで、両先生のご協力に感謝いたします。