地域社会との連携・その後

環境計画学科・環境社会計画専攻

環境政治経済大講座

秋山道雄

 昨年度の学部報特集が「地域社会との連携」であったため、フィールドワークIIのBグループが対象としている赤野井湾集水域での経緯を述べた。ここ5年間ほど教員や学生がごやっかいになっているにもかかわらず、こちらからはこれまでの成果を地元にお伝えしていないということにも触れた。この1年をふりかえってみると、そこに若干の変化がみられるので、その後の話題2件をご報告する。

 ひとつは、赤野井湾流域協議会の動きである。これまでにも、この地域をフィールドにして卒論や修論を書いた学生・院生は何人か居た。むろん、他大学の学生や院生もここを対象に卒論や修論を書いている人がいる。協議会のメンバーからは、それらの成果を地元に還元して貰いたいという希望がこれまでにも発されていた。お世話になった学生や院生は個々には成果を協議会へ届けていたことと推測するが、その関係者が相互に成果をもちよって意見交換をするという機会はこれまでにはなかった。その空隙を埋めることを目的として、協議会事務局がリーダーシップを取りながら、シンポジウムの開催が計画された(11月10日・日曜日)。

 協議会事務局が、これまでに卒論・修論を書いた人たちによびかけたところ、5人の人がこれに応じた。県立大学環境科学部のなかで、ここを対象に卒論や修論を書いた人は私の知る限りでも4〜5人はいるが、そのなかで時間その他の都合がついて発表をしたのは生物資源管理学科の院生・若井泰佑君である。 その他、京都府立大・立命館大・京大・東京農工大の院生ないし卒業生が報告をした。

 卒論や修論の報告が主体となるということもあって、主催はLake Net学生協議会が担当し、赤野井湾流域協議会は共催という形をとった。「学生が見た流域の住民活動」というシンポジウムのテーマが示しているように、報告の大半は流域協議会のこれまでの活動に焦点をあてたものであった。それを聞いた地元の方々は、学生が報告したあと、積極的に質問や意見を出されていたから、情報交換と相互の交流を計るという当初の目的は達成されたといえるだろう。今後に期待を抱かせるシンポジウムだった。

 もうひとつは、フィールドワークIIのBグループを担当している教員が、守山市でシンポジウムに関わったことである。県立大学の交流センターは、毎年、「滋賀県立大学移動公開講座」を開催しているが、今年度はFWII・Bグループの担当教員である林昭男教授が公開講座の担当者であったため、この機会にこれまでのFWII・Bグループの成果をもとに地元の方々と交流するという企画がもちあがった。Bグループ担当のうち、金木亮一・轟慎一の両氏と私が前半で赤野井湾集水域に関する話をし、これを受けて後半に林教授が司会者となってシンポジウム(テーマ:ホタルと共生するまちづくりーー環境負荷の少ない地域づくり)を行なうことになった。

 シンポジウムでは、前半の話題提供者3名に加えて、流域協議会理事1名、守山市環境担当課長、泉町自治会事務局長の計3名がそれぞれの立場から日頃の実践内容を報告された(12月8日・日曜日)。我々3名の話は、これまでに収集した資料をもとに集水域の環境特性に関する情報を提供し、あわせて赤野井湾集水域の特徴をいかにみているかといった点をまとめてお伝えするものであった。これに対して、地元の3名の方の報告は各持ち場での具体的な内容であったから、相互に補完的な報告であったように思う。

 会場借上げ時間の制約があって、最後の総合討論が短くなってしまったのは残念だが、これまで懸案であったフィールドワークの成果を地元にお伝えするという課題の一部を実施できたことは幸いだった。いまは、これのまとめに入っている。