生物資源管理学科この一年





小 池 恒 男

 平成13年3月に坂本教授、末石教授、久馬教授を送別し、新学長のもと1年が過ぎなんとする年度末を迎えようとしていますが、振り返りますと、例年になく内外ともに他事多難な1年間であったことかと、感無量の思いがいたします。

 中国湖南省の湖南農業大学・湖南師範大学との交流協定締結交渉に着手(5月に中国訪問、10月、11月学長を代表とする訪問団来学)、大学の独法化・再編統合問題の惹起(6月、『大学の構造改革の方針』の発表)、EMS(ISO14001)の立ち上げ検討の開始(6月)、財務会計処理の改善・改革(7月)、「滋賀・ミシガン共同シンポジウム2001」の開催(7月)、学部の将来構想委員会の立ち上げ(委員会の開催、第1回8月8日、第2回10月24日、第3回12月11日、第4回平成14年1月31日)、自己評価委員会の活動開始(10月)、世界湖沼会議の開催(協力、11月)、びわ湖国際環境ビジネスメッセ2001への出展(11月)等々、息抜く間もなく、 どれもこれもが難問で、正直、少々疲れぎみというのが実感でございます。このような事態を見込んで、学部・研究科の入試委員会、教務委員会を設置しまして、分権化を図り、これらの新たな課題に積極的に立ち向かえるよう、体制整備も図ってまいりましたが、その程度のことでは追いつきそうにもないというのが実感でございます。

 「何か良いニュースはないのか」という声が世間に満ち溢れているというのが世間の今日的状況でございますが、しかしながら、本学部にとってのこれらの課題の多くは、言ってみればどれもこれもやりがいのある仕事でもあると私は心からそう思っております。残された任期のなかで、とくに本学部の改革につきまして全力投球で取り組み、なんとか構想実現に向けて歩みを進めることができたら、と強く念じているところであります。




中 嶋  隆

 あの「狂牛病」問題は、畜産関係者だけでなく、国民的な話題となった。畜産関係者に限っていえば、昨年の「口蹄疫」の方が大問題であったが、人間への影響が少ないことからも、「口蹄疫」は関係者だけの問題に留まった。「口蹄疫」とは、ウイルスが原因で起こる牛、豚、やぎ、羊などに罹る急性伝染病で、人には感染しないといわれている。わが国では過去100年ほど発生を見ない伝染病で、人間でいえば、最近アメリカで爆破テロと絡んで話題となった「炭そ病」と同じ位恐ろしい病気である。

 「狂牛病」は、直接的には、家畜の病気で専門分野からいえば獣医師や公衆衛生の分野であるが、畜産関係者であるわたしの講義でも、この狂牛病を取りあげた。多くの学生から、「市場の牛肉は大丈夫ですか」、とよく聞かれた。難しい質問であるので、ほとんどの場合、「わたしはこの時とばかりに、今まで以上に安くなった牛肉をたべていますよ」、と答えることにした。食品の安全性につながる話題は、人の命にかかわることであり、関心事としては非常に重要なことではあるが、それに乗じて日本の将来を見込んだ話題にもっていくことも大切だと思う。

 年末、ある畜産生産者が、いみじくもいわれたことが気にかかる。「狂牛病も恐いが、今の日本の農業や畜産業で何が起こっているか、知っていますか。どんどん農業後継者が減り、こんな調子ではわが国では、国産の農産物が食べられなくなりますよ、その方がよっぽど恐いのですよ」、続けて「わたしは、精一杯、安全でおいしい食べ物を作るだけです」、と。 

 きょうの朝刊は、雪印食品の輸入牛肉の国産牛肉への詰め替え事件が、紙面を沸かしていた。




川 地  武

教 育 土壌環境学と土壌資源管理学の講義を担当(学生向け)。新入り教員としてテキスト作りに追われる。基礎知識の習得を半分程度とし、あとは学ぶことにより知識が適用可能な分野、解決可能な問題は何かを理解させるべく、いろいろな分野の話題や課題を紹介した。土壌環境論(大学院生向け)・・実務経験をベースに土と地盤に関する最近のトピックスを紹介

研 究 カドミウム汚染土の電気化学的修復・・・基礎実験継続、土壌肥料学会全国大会に成果発表、彦根近郊の建設発生土の発生状況と循環に関し予備調査

対外活動 日本学術会議第五部門環境工学委員会・・・地盤環境工学委員会幹事、地盤工学会技術者教育委員会・・・地盤技術者の生涯教育の理念作り、日本材料学会地盤改良部門委員会・・・技術評価委員長を担当、セメント協会・・・六価クロム対策委員会委員を分担、エコマテリアル研究会・・・事業委員長を担当

講 師 日本建築構造技術者協会の定期講習会「地盤・基礎と環境」、材料学会講習会「地盤環境と地盤改良」、セメント協会固化材セミナー「固化・不溶化処理における地盤環境改善効果の持続性について」、近畿大学集中講義「応用土壌学」

その他 「快適環境な街づくり(仮題)」(本年5月出版予定、共同執筆)の原稿執筆 Insolubilization and Solidification as a Measure for contaminated Ground, International Simposium on Application of Narural Material for Environmental Geotechnology (2001,Tokyo)




長谷川  博

 大学院博士前期課程の修了生2人を2001年3月に送り出し、ようやく大学の研究室らしくなってきた。在籍する院生、学生にとって社会に先輩がいることはいい刺激になっているようで、研究室の活動も開学時にイメージしたように行えるようになってきた。今年度の研究内容は従来の硝酸代謝の遺伝学、ストレス耐性の遺伝・育種学、ヨシの遺伝学に加え、花の匂いの遺伝学のテーマもとりあげた。花のテーマは大阪府立大学等との科研費による共同研究への参加で、良好な室内環境を創造するための観賞植物の育種と位置づけている。

 研究室の院生、学生の研究が年度を越えて繋がるようになり、今年度はいくつかの重要な研究の進展があった。すなわち、硝酸還元酵素の活性が正常の20%程度でも硝酸を窒素源とする環境で良く育つイネの突然変異体があること、セシウム抵抗性のイネに特異的に欠失する遺伝子を発見し、それがストレス反応に関係する遺伝子の翻訳開始因子と塩基配列が一致したことである。植物栄養の効率的利用を図るための遺伝子の探索とその機能の調査という研究の目的に一歩近づけたと思っている(その理由は少し専門的になりすぎるので、ここでは省略する)。ようやく研究室の若いメンバーが取り組んだ実験結果から論文が書けそうである。研究室の院生が書いた投稿論文を添削することで多忙な日々もやがてやって来るだろう。

 北海道のヨシ群落調査も2年目になり、研究の方向性が見えてきた。琵琶湖岸と十勝のヨシ原と比較しながら、ヨシの群落の成立条件を考えたい。一方でヨシの養分吸収遺伝子の研究を進めてファイトレメディエーション(植物による環境修復)に有用なヨシを育成し、それを利用したヨシ群落を作ることがヨシをテーマとした研究の究極の目的である。十勝のヨシは琵琶湖のヨシ改良の遺伝資源としても有用なはずである。




西 尾 敏 彦

 滋賀県には滋賀県固有のカブが約10品種存在する。蒲生郡日野町が原産地とされ、現在も漬物用として栽培されている'日野菜'、安曇川町万木地方が栽培の中心であるが、湖東やその他の地域でも栽培が盛んな'万木'、現在はほとんど栽培の見られない'近江'(大津市)、'矢島'(守山市)、'信州'(愛知川町)、'小泉'(彦根市)、'大藪'(彦根市)、'入江'(米原町)および'蛭口'(マキノ町)などの品種がある。さらに、由来は明らかでないが米原町在来の赤カブから選抜され、10〜15年位前に栽培が始まったという'赤丸かぶ'もある。これらのうち現在も栽培・出荷がおこなわれているのは'万木'(滋賀農試育成のネコブ病抵抗性品種'近江万木')および'日野菜'の2品種と米原地方で栽培されている'赤丸かぶ'のみである。

 品質面で現代の食生活に適合しない、収量の点から経済栽培が成り立ちにくい、あるいは環境適応性が狭く栽培地が限られるなどの理由で、効率を重視する近代農業のもとで、栽培面積が激減、消滅していく野菜の品種は多い。しかし、地域の気候風土や文化に適応して発達してきた地方固有品種が消滅していくのは、野菜のもつ多様性や遺伝資源としての重要性を考えると、手をこまねいて見ているだけでは済まされないような気がする。

 滋賀は全国的にもカブ地方品種の多い地域で、外観的に、とくに色や形においては個性的なものが多い。各品種のもつ形態的特性についてはそれらの原産地や来歴とともに古くから調べられているが、生態的特性である成長の様相あるいは生育におよぼす光、温度、土壌・肥料などの影響についての報告はほとんどない。

 滋賀県農業センターや農家が保持している貴重な種子を譲り受け、栽培を試みた。また、'日野菜'や'万木'あるいは'赤かぶ'の栽培地を訪ねた。固有品種の栽培の復活などと大それたことを考えているわけではない。カブのもつ食品としての価値、農産物としての価値、さらに文化的価値の再考につながればと思っている。




金 木 亮 一

【論文その他】(1)金木亮一・岩佐光砂子・矢部勝彦;田面水のSS・COD濃度に及ぼす代かき、土壌および肥料の種類の影響、農土論集215、p.93-98(2001.10)  (2)古川政行・金木亮一;地域用水の水質と利用状況の関係、農土論集214、p.111-118(2001.8) (3)小谷廣通・矢野友久・金木亮一;熱フラックス比法による水蒸気フラックスの推定、農土論集213、p.1-10(2001.6) (4)金木亮一・矢部勝彦・小谷廣通・岩間憲治;田面水の窒素・リン濃度に及ぼす代かき,施肥および土壌の種類の影響、土肥誌73(2)、(2002.4掲載予定) (5)金木亮一・矢部勝彦;木酢液によるダム湖濁水の浄化、農土誌掲載待ち (6)金木亮一;「農業技術体系 土壌施肥編」、農文協、(2002.3発行予定)  (7)中日新聞コラム「琵琶湖と環境」寄稿、7/15・7/22・7/29・8/4・8/11・8/18日刊

【研究発表】(1)金木亮一・岩佐光砂子;木酢液を用いたダム湖濁水の浄化、農土学会大会講演要旨集,p732-733(2001.7) (2)古川政行・金木亮一;地域用水の水質と利用状況の関係、農土学会大会講演要旨集,p310-311(2001.7) (3)大沢芳樹・金木亮一;水生植物による水質浄化、農土学会大会講演要旨集,p738-739(2001.7) (4)西岡治美・金木亮一;田面水の水質変化について―無代かき・育苗箱全量施肥栽培に関する研究(6)―、農土学会京都支部講演要旨集,p84-85(2001.11) (5)志智真梨子・金木亮一;内湖と灌漑施設による水質浄化能、農土学会京都支部講演要旨集,p86-87(2001.11) (6)若井泰佑・金木亮一;宇曽川流域からの流出負荷量について、農土学会京都支部講演要旨集,p88-89(2001.11)  (7)古川政行・金木亮一;地域用水の水質と利用状況の関係、水環境学会関西支部講演集,p65-66(2001.11)

【講義・実験実習】(1)水質管理学 (2)水理学 (3)地域環境整備学 (4)生物資源管理学実験VII (5)環境FWII (6)環境FWIII (7)水資源環境論(大学院) (8)環境教育の特別講義(伊吹高校、10/20)

【各種委員】(1)滋賀県みずすまし構想推進委員会 (2)滋賀県琵琶湖総合保全学術委員会小委員会 (3)早崎干拓地内湖機能復元に伴う地域振興方策懇談会 (4)新湖北地区地域用水検討委員会 (5)児島湾周辺地域調査検討委員会 (6)農業土木学会農村計画研究部会幹事など




小 谷 廣 通

【論文・発表】

1)「熱収支フラックス比法による水蒸気フラックスの推定」(共著)、農業土木学会論文集(213)、p1-10 (2001.6)。

2)「熱収支フラックス比法による農地からの物質輸送の測定」、平成13年度鳥取大学乾燥地研究センター共同研究発表会講演要旨集、p.37-40。

【研究経過】

 (1)熱収支式を構成する一部の項に定誤差が含まれていると考えると、熱収支フラックス比法によって地表面-大気間の水蒸気フラックスが精確に推定できる。そこで今度は、2高度の温度差と水蒸気密度差に不定誤差が含まれていると考えると、補正温度差を用いて水蒸気以外の気体フラックスが精確に測定できる。本年度は水田からのCO2フラックスを測定し良好な結果が得られたので、農業土木学会論文集に投稿する予定である。

 (2) 渦相関法によって植生-大気間のH2OおよびCO2フラックスが精度良く測定できるとされている。野球場外野芝生面上でH2O 濃度変動計を用いてH2O 濃度変動を測定した。まだデータの解析が完全に終わっていないが、その出力(電圧変動)がH2O 濃度変動だけではなく気温変動によっても変化することがわかった。このことは、最近地球温暖化の問題と関連して森林-大気間のCO2フラックスの測定結果がよく報告されているが、これらの測定値に疑問を投げかけるものである。

【講義】

(1) 測量学、(2)土壌物質移動論、(3)応用気象学、(4)測量実習、(5)環境フィールドワークII、(6)環境フィールドワークIII、(7)生物資源管理学実験VIII。




上 田 邦 夫

講義:大学院の講義(持続的生物生産論)では本年度から但見教授と半分ずつを担当した。今日の施肥方法とその問題点、今後に期待される施肥法、有機食品とは、遺伝子組み換え食品の内容とその是非などについて述べた。

 学部の講義(生物資源化学、植物栄養学)は昨年と同様であり、履修の手引きに書かれている内容である。外書講義を4分の1担当した。

実験:生物資源管理学実験6を実施し年間12回の実験実習を行った。化学実験は前半2回後半2回の全4回を担当し比色定量法を行った。

フィールドワーク1:島緑地の環境機能を荻野教授と担当した。本年は犬上川上流の大滝神社で松枯れがひどくなっていた。また、犬上川の河川改修で犬上河河辺林への訪問を取りやめた。

フィールドワーク3:本年度より選択制となった。私が開設した「彦根市における酸性雨と松枯れの実体」のテーマには5名の参加者があった。隔週一回のペースで一年間実施した。詳しくは環境フィールドワーク2001を参照。

卒業研究:2名の学生を担当した。占部千晶はバクテリアセルラーゼの精製を、鈴木健夫君に引き続いて担当してもらった。ゲルろ過による精製過程の問題点や精製物の2次元電気泳動を実施してもらった。種中早苗はキチナーゼジーンの解析を担当してもらった。既に分離してあるキチナーゼジーンをデレーションし、それらの活性の有無を検討してもらったり、その長さを電気泳動的で測定してもらったりした。

 とかく関わりの深かった生態学科の中山教授が昨年末に逝去された。生態学科では依田教授に続き2人目である。どちらも前日まで挨拶をするなどしていたのに、翌日はもうなくなっていたとのことで、驚きと強いショックを受けた。思うに彦根はかなり寒い勤務地であり、県立大学は開学以来かなりの無理がそれぞれの先生にかかっていたのではないかと思われる。ひとごとでは済まされない思いがしている。




増 田 佳 昭

【主な研究教育活動】

(1) 海外調査:4月,9月と2回にわたってドイツ農協の現状に関する調査を行った.連合会を中心とする調査であったが,1970年代以降の市場競争の強まりと金融規制強化にともなう組織構造改革の経過およびガバナンスシステムについて,一定の成果を得た.報告書は,今年度中をめどにとりまとめる予定である.

(2) 新たに学部生対象に「協同組合論」の講義を始めた.広く非営利組織を視野に入れながら,現代における協同組合を論じようという構想だが,実際には大学生協の話などが学生には身近だったようだ.

(3) 環境フィールドワークで,水田の圃場別濁水排出状況調査を行った.

【主な論文】

(1) 増田佳昭・今津進一「琵琶湖集水域水田における用排水管理の実態−圃場からみた農業濁水問題」,『滋賀・ミシガン協同シンポジウム2001報告要旨集』,2001年7月.

(2) 増田佳昭「ステークホルダー主導型経済の旗手として」,協同組合経営研究月報,No.578,2001年11月.

(3) 増田佳昭「JA改革の課題と方向−広域合併JAの組織・事業改革」,近畿農協研究,No.204,2001年3月.

(4) 増田佳昭「農協改革論議にみる21世紀初頭の系統農協の生き残り戦略」,農業・農協問題研究第24号,2001年2月.

【主な社会活動】

地域農林経済学会常任理事,日本協同組合学会理事滋賀県卸売市場審議会委員,滋賀県こだわり農産物審査委員会委員長,近畿農業協同組合職員資格認証委員会委員(上級),




須 戸  幹

 私の当面の研究テーマは,「農薬が琵琶湖の唯一の自然流出河川である瀬田川で1年中検出されるのは、どのような理由によるのか」を出発点として、農薬の環境中での動態を明らかにすることである。昨年までは瀬田川や水田の排水河川をフィールドに調査・解析をして1)、琵琶湖を中心として農薬の流入・流出のマスバランスを大まかに試算するところまでこぎつけた。試算をより精密にするために、 降雨時の流出を計算に入れる作業が残っているが、これらの成果は7月に行われた滋賀−ミシガン合同シンポジウム (県立大学で開催)2)、11月の世界湖沼会議(大津で開催)3)で発表し、大きな関心を持たれたと思っている。

 これまでの解析では琵琶湖は大きなひとつの容器に過ぎず、内部の農薬の動きはブラックボックスであった。そこで、今年はいよいよ琵琶湖の内部に調査の手を伸ばした。

 平面的な農薬の流出は沿岸部に留まっているのか、中心部まで拡散するのかどうか、除草剤の散布時期はちょうど水温躍層の形成時期にあたるが、農薬は表層水にのみ分布するのか、あるいは底部でも検出されるのか、季節的にどのように消長するのか、流入河川の濃度と比較するとどのような特徴があるのか、などなど興味は尽きない。

 大学の内規で、大学の観測船「はっさか」で調査を行うためには、乗船する教員1名が船舶操縦士の資格を持っていなければならない。そのため昨年の2月に法規・航海と実技の講習をうけて4級船舶の免許を取った。実に久しぶりに受けた試験であった。

 「はっさか」はそれほど大きい船ではなく、沖に白波が立つと出航中止となる。他にも琵琶湖をフィールドとしている研究者はたくさんいるので、思い通りの調査日程が組めずにやきもきした。しかし、5〜8月に月1〜2回ペースで出航でき、貴重なデータを集めることができた。その一部は2002年3月の日本水環境学会(岡山大学で開催)で発表するが、非常に興味深い結果を報告できると思っている。

1)Miki Sudo et al. Water Research 36(2002) 315- 329

2)Miki Sudo et al. Lakes and Reservoirs. in press.

3)Miki Sudo et al. 9th International conference on the conservation and management of Lakes (2001)31-34




高 橋 卓 也

教育・研究両面でまだまだ助走期間の1年でした。

【教育(担当科目のいくつか)】

農産物価格流通論: ミクロ経済学とマーケティングの基礎を農産物をテーマとして説明した。もっと具体的事例を使って理論の切れ味といったものを見せたい。

農業政策論: 森林政策と農業政策につき歴史を通じて現代の課題への理解を深めようと試みた。さらに現代の課題について学生に調べ考えてもらう機会をつくりたい。

環境監査各論: 滋賀県工業技術総合センターの前川講師のあと、4回分担当。環境監査、環境認証を巡る社会・政治・経済学といったものを展開し、大局的見方を持ってもらおうとした。

【研究】

去年度までの大学院生時代の成果を発表した。

(研究論文)

"Why Japanese firms choose to certify: A study of managerial responses to environmental issues," (共著), J. of Environmental Economics and Management 42(1) 23-52, 2001.

"Rising to the Kyoto challenge: Is the response of Canadian industry adequate?" (共著), J. of Environmental Management 63, 149-161, 2001.

"The Canadian commercial forestry perspective on certification: National survey results," (共著), Forestry Chronicle 77(2), 309-313, 2001.

"Corporate environmentalism across cultures: A comparative field study of Chinese and Japanese executives," (共著), International J. of Cross Cultural Management 1(3) 287-312, 2001.

(研究発表)

「環境認証ISO14001の普及パターンからみた日本の製造業の環境対応」環境経済・政策学会2001年度大会

「カナダにおける森林認証の普及パターンの分析: ISO、カナダ規格協会(CSA)、森林管理協議会(FSC)の3種の認証について」林業経済学会2001年度秋季大会

【その他】

ブラジルからの客員研究員(Carla Pasa, リオ・グランデ・ド・スール州、Univates大学教授)を2001年9月から2002年3月まで迎えた。




泉  泰 弘

 省力化を目的としたコムギ・ダイズ二毛作不耕起栽培の圃場試験(3年計画)が2年目に入った。今年は卒業研究のテーマとして学生と二人三脚で取り組んだため、地下部のみならず地上部についても定期的に生育調査を実施するなど、独力で行った昨年度よりも格段に豊富なデータを採取することができた。最終年度となる来年度には重水(D2O)を用いた吸収実験も試みる予定である。

 一方、無代かき栽培と育苗箱全量施肥がイネの根系発達に及ぼす影響についても昨年度より引き続いて調査した。今年は形態だけでなく機能面からも解明を試みたのであるが、採用した測定法に問題があったため、残念ながら芳しい結果は得られらなかった。しかしながら、形態調査では昨年以上に詳細かつ精密なデータが得られたので、この2年間の結果を何とか上手くまとめていきたい。いずれにせよ、水田での根系採取は非常に労力がかかるので、撤退してポット試験に移行するか規模を縮小しようかと考えているところである。

 他にはヨシの栽培試験(地上部と地下部生育に対する系統、水深および土性の効果)とイネの根の培養実験(窒素源の異なる培地条件下での突然変異体と原品種の根系発達の比較)も新たに取り組んだが、「こんなはずじゃなかった!」の連続で1年が終わってしまった。が、いろいろと改良点すべき点が浮き彫りにされたので懲りずに来年度以降も継続したい。

 昨年度のパラグアイ共和国への出張後に作成した同国の中等農業教育改革に関する視察報告書を元に、およびインドネシアで実施したキャッサバの根系発達についての栽培実験をまとめて論文を執筆し、共に学会誌に投稿した。いずれも初稿には非常に厳しいコメントが付けられ、一時は完全に暗礁に乗り上げた格好であったが、何とか年内に受理まで漕ぎつけることができ、胸をなで下ろしている。

 最後に、今頃になって気が付いたのであるが、2001年度はついに海外に出張する機会が一度もなかった。365日を日本国内で過ごしたのは6年ぶりということになる。出不精(基本的に自転車で行けるところにしか行かない、ただし自転車ではかなり遠くまで行く)の私の本領が発揮された1年ともいえ、特に不満があるという訳でもないが、そのうちに何らかのチャンスを掴んでみたい。




上 町 達 也

2年前より、園芸品種アジサイの作出種であるアジサイ(Hydrangea macrophylla)、ヤマアジサイ(H. serrata )、エゾアジサイ(H. serrata var. megacarpa)の系統分類に取り組んでおり、ようやく結果の一部を発表できる段階になった。この研究では材料の収集が重要であるが、日本アジサイ協会会長の山本武臣氏や神戸市立森林植物園の藤岡昇氏、上田稔氏など各方面の多くの方々にご協力いただいたおかげで、研究を進めていくことができた。

ここ数年間、アジサイの装飾花の発生に関する研究にとり組んできた。3、4年前にアジサイやシクラメンの生産・育種農家である坂本正次氏より、花房型についての2種類の枝変わり株を提供していただいてから、この研究もようやく軌道にのりはじめた。今年度はこれまでの研究結果の整理、園芸学会において研究発表、来年度に分子生物学的解析を行うための材料作りとサンプリングを行った。




入 江 俊 一

 着任して早一年。研究の立ち上げでもがいているうちに過ぎてしまいました。今年度は従来行ってきた担子菌の研究だけではなく、(財)岩手生物工学研究センターとの共同研究としてSAGE法を用いたイネ及びいもち病菌の遺伝子発現解析にも参加でき、非常に有意義でした。

2001年度の主な研究業績

【論文】

(1)Irie, T., Y. Honda, T. Watanabe and M. Kuwahara. (2001) Efficient transformation of filamentous fungus Pleurotus ostreatus using single-strand carrier DNA. App. Microbiol. Biotech. 55 (5): 563-565

(2)Irie, T., Y. Honda, T. Watanabe and M. Kuwahara. (2001) Homologous Expression of Recombinant Manganese Peroxidase Gene in Pleurotus ostreatus. App. Microbiol. Biotech. 55 (5): 566-570

(3)Irie, T., Y. Honda, T. Hirano, T. Sato, H. Enei, T. Watanabe and M. Kuwahara. (2001) Stable transformation of Pleurotus ostreatus to hygromycin B resistance. App. Microbiol. Biotech. 56(5-6): 707-709

【総説】

(1)Irie, T. (2001)Development of Transformation and Recombinant Gene Expression Systems in Pleurouts ostreatus. Wood Res. 88: 1-18

【学会発表】

(1)入江俊一、佐藤利次、齋藤久美子、本田与一、渡辺隆司、桑原正章、江井仁. カルボキシン耐性マーカーを用いたシイタケ(Lentinula edodes)の形質転換. 2001年 応用きのこ学会大会

(2)入江俊一、佐藤利次、齋藤久美子、本田与一、渡辺隆司、桑原正章、江井仁. カルボキシン耐性マーカーを用いたシイタケ(Lentinula edodes)の形質転換. 2001年 第1回 糸状菌分子生物学コンファレンス