生物資源管理学科この一年

生物資源管理学科長

中嶋 隆

学科の1年を振り返ってみて

1.はじめに

 はやいもので、平成13年4月に学科長に就任して1年が経過しょうとしている。しかしながら、3月末までには、4回生の卒業研究の発表会、卒業認定、卒業式と、結構大切な仕事が数々待ち受けている。また、入学試験も前期日程、後期日程の2回がある。そんななかで、1年を振りかえってみる。

 4月、最初の学科会議には、久しぶりに21名の教員全員が集まった。そこには、我々のスタッフの一員になられた新任の4名の先生の姿があった。平成7年の県立大学開学時からおられた重永先生、久馬先生、吉田先生の後任として、それぞれ秋田先生、川地先生、高橋先生、そして故鈴木先生の後任として入江先生を迎えた。平均年齢がうんと若くなった。4人の先生方の紹介は、別ページに掲載されるので、ここでは省略させていただく。

2 学科の将来構想

 前学科長の矢部先生の就任期中に学科の将来構想について、大変なエネ−ルギ−を費やし、検討された。そのあとを受けて、この1年間で仕上げをしなければならなかったが、なにひとつ手をつけられなかった。言い訳になるが、学部の将来構想検討会が4月から立ち上がったので、その進展状況をみるためであった。その検討会もこの4月から、本格的に、そして具体的に議論が始まると聞いている。

3 学科の運営

 学科の将来構想という避けられない大きな課題とは別に、当面の課題も山積している。一般入学試験の科目を何にするかで、何回か議論したが、結論が出ない。理由は何か。学科の理念に基づく専門分野の広さだ。21名の教員組織の各教員の専門分野は、大きくは、6つに分けられる。それらは、植物、動物、土壌・植物栄養、微生物・昆虫、水資源環境、生物資源経済である。このグループには、自然科学系も、社会科学系もあり、また自然科学系のなかでも生物系、化学系、物理系と広範囲で、真剣に議論すればするほどまとまらない。

 つぎに、4回生からの卒業研究への分属方法に問題が出てきた。開学以来、教員1人あたり上限は学生5人の分属で実施してきたが、専攻学生ゼロの教員もあり、アンバランスを生じ、不公平であるという意見が出てくる。この問題は一般入試の科目問題と通じている。つまり学生にとっては、生物資源管理学科はメニューが多すぎるのである。しかし、いまさらメニューを少なくすることは容易なことではない。学科の再編など、学部の将来構想がどのように展開していくかによっては話しは別だが。しかし、なんとかしなければならない課題である。

 また、この分属に関係して、助手の実験室の確保に問題がある。学科としての対応を考えなければならないが、これも難題である。学科でのやりくりができなければ、学科を超えた議論をして欲しい。とくに若い教員には十分な研究体制を整えなければならないことは、誰もが認めているのだが。政治ではないが、総論賛成、各論反対がつきまとう。現状は、助手にはそれ以外の教員と同じような実験室および研究室が設置されていない。どう考えても不公平である。

 最後に、大学全体で、自己点検、自己評価の問題を具体的に検討することがスタートした。行政、試験研究機関、他大学では、この件はすでに始まっていると聞いている。本大学でも始まった。いいことである。世の中には古くていいものもあるが、いつも身の回りのことについて素直に点検し、そして点検してもらい、その結果をうけ、改善、発展に結びつけることは必要である。

4 学生の教育

 開学後4年目で、学科のカリキュラムに手をつけ、理念に結びついた新カリキュラムの導入をやってきた。この4月からは在学生のすべてが、新カリキュラム適用の学生となった。今までと違い配布される授業時間割表がひとつになるだろう。しかし、ここでも、問題が出ているという。新カリキュラムでは、学科の専門科目が増え、より幅の広い環境科学の教育が受けられるように設定された。しかし、学生は自分の将来進みたい分野の講義のみを履修する傾向がみられ、結果的には逆に幅の狭い教育を履修したまま、卒業するという結果を招いているという、意見が出ている。名案はないものだろうか。

5 卒業生の進路

毎年、約60名の学部生が巣立っていく。今年度卒業生の進路を、1月末現在ではあるが調べてみた。大学院進学が17名で、昨年より4名多い。公務員は5名で、2名少ない。民間企業へは16名で、4名少ない。その他、農業団体もあるが、次年度もう一度公務員をねらう学生も3名あり、未定者は15名以上いる。1名が、アメリカへ農業研修に行くという、頑張って欲しいものである。今年の就職状況は、いまの社会情勢を反映して厳しいことには間違いないが、民間の環境分析関係などへの就職先が、昨年度に比べて多い。このことが学科の専門分野に通じていると考えれば、せめてもの救いである。

6 対外的交流

 今年も、ブラジルから滋賀県国際課を通じて研修員がお見えになった。ブラジルのウニヴァテス大学教授のパサ・カルラ女史で、高橋先生の指導のもとで「日本企業の社会・環境に対する行動の観察と考察」を課題に、昨年の9月から今年の3月まで客員研究として在籍される。

 その他、在外研修では、秋田先生がフィリッピン(4月)とカンボジア(9月)、増田先生がドイツ(4月)とイタリア・ドイツ(9月)、小池先生が中国(5月、8月)へ2回、中嶋が中国(5月)とチリ(7月)、沢田先生がマレーシア・インドネシア(8月)、岩間先生がタイ(8月)へと、国際会議への出席や、研究活動などで、出かけられた。

7 おわりに

 今年度を振り返ってみて、時間だけはアッという間に過ぎてしまった。この1年間、一体自分はなにをしてきたのかと、自己批判をしなければなりませんが、学科運営に対し、ご協力、ご指導いただいた学科の全員の先生方にこころからお礼申し上げます。