森林文化プロジェクト〜森と人のよりよい関係のために〜

黒木 太介

環境生態学科3回生

 森林文化プロジェクトなどというといかにもこういう団体がありそうなのだが、べつにこういう団体があるわけではありません。もちろん固定のメンバーがいるわけでもありません。僕が森林に関わる活動をする時になんとなくこの言葉を心の中で使っているだけです。僕は特別何かを主催しているわけではなく、環境、森林、教育などいろんな活動に参加していることが多いです。ここでは特に森林に関わる活動について書きたいと思います。

 僕が森林に関心を持ち、そこをフィールドに活動し始めて2年以上が経ちました。なぜ今森林にこだわるのか。その想いはここでは書ききれないのであえて書きませんが、森林から環境問題までを含めて、いろんなことを思って活動しています.そして森を中心にした活動がとても楽しく、気持ちの良いものであることが活動の原動力となっていると思います.それでは具体的な活動について書いていきたいと思います.

「竹取プロジェクト」への参加

滋賀県立大学内の学生約10人ほどで活動しています。犬上川沿いの竹林を見ればわかると思いますが、竹林も人が利用しなくなったため荒れてしまっています。竹林を整備しながら竹を使って楽しもうというのがこのプロジェクトです。春にはタケノコを掘り味覚を楽しみました。夏には竹でいかだを作りいかだレースに参加しました。また各種イベントにおいて竹のおもちゃ、楽器などをつくる竹細工のブースを開き、子供達と楽しみます。そしてオイル缶やドラム缶を用いた竹炭作りにも挑戦しています。詳しくは環境科学部年報第5号の学生活動報告「竹取プロジェクト」を参照してください。

「森林発電プロジェクト」への参加

 このプロジェクトは滋賀県湖東地域振興局森林整備課(旧彦根県事務所林務課)が中心となり2000年度から始まった事業で木質発電を中心とした木質バイオマス資源利用の循環モデルを市民が主体となって作ろうとしているもので、県立大学も参加しています。場所は彦根市のお隣りの多賀町高取山ふれあい公園で、基本方針は「みんなで手作り森林発電プロジェクト」「循環型社会への実践」「自然と人との賢明なつきあい方」の3つです。基本方針にも掲げられているように市民の手作りで進められており、参加者の話し合いの中から以下の6つの活動が生まれました。

まず1つ目は森林資源の利活用、森林整備です。日本では整備不足の為、人工林は荒れており整備が必要な状況です。素人では本格的に整備できるわけではありませんが、人工林の間伐という作業をし、そこで得られた木材を3つ目の活動に利用しました。2つ目はプロジェクトの名前にもあるように木質発電です。木質資源から取り出した可燃性ガスで発電を行うためのガス発生炉および発電システムを製作し、発電を行っています。木などの木質バイオマスを燃やしたときに発生する二酸化炭素は、木が生きていたときに成長過程で空気中の二酸化炭素から固定した炭素が、また二酸化炭素として空気中に出て行くだけなので、地球温暖化に対しては中立的です。化石燃料の使用を減らし、木質バイオマスの利用を増やしていくことは地球温暖化の進行を遅らせるのに有効だと思います。僕はこの木質発電の可能性に非常に魅力を感じています。3つ目はこの発電プラントを収納する「森のエネルギー小屋」を作りました。この小屋を作るのには、先ほどの自分達が森から伐り出してきた木材を使いました。設計も製作も市民が行いました。僕も作業に参加しましたが、普段体験できない小屋作りへの参加はとても面白く、良い経験になりました。4つ目は炭窯作りと炭焼きです。日本の木質バイオマスのすぐれた利用方法の1つとして木炭があります。炭窯も手作りし、年数回の炭焼きも行っています。僕は、ここでの炭焼き以外でも、以前から炭焼きというものを体験しています。初めて炭焼きをしたときに炭や炭焼きに魅せられました。5つ目の活動は木炭水質浄化システムの製作です。もちろんここで使う木炭は自分達で焼いたものです。木炭は穴だらけの構造をしており、表面積は木炭1gでテニスコート1面分にもなります。これにより、様々な物質を吸着する性質があり、また微生物のすみかにも適しており、これを水質浄化に用いるものです。6つ目は木炭自動車の製作です。これの原理的には木質発電と同じように、木炭から可燃性ガスをとりだし、それをガソリンエンジンで燃焼させ車を走らせるというものです。この木炭自動車は各地のイベントに出展され、実際に多くの人に乗っていただいて木質バイオマス利用のPRに使われています。以上6つの活動を行い、また継続しています。他に年1回シンポジウムを県立大学交流センターで行ったり、セミナーを開催するなど、広く一般の人に木質バイオマスエネルギーを知っていただくように頑張っています。

木質バイオマスエネルギーは、環境に対しての負荷が少なく、地球温暖化に対しても中立的です。全てのエネルギーを木質バイオマスでまかなうのは無理ですが、地球温暖化の原因である化石燃料を少しでも木質バイオマスに切り替えていけば、地球温暖化対策に有効です。スウェーデンでは1次エネルギーの約2割を木質バイオマスから得ています。さらに、日本の森はもっと木を伐らなくてはいけない状態にあるので、木を伐って木質バイオマスを利用すると、森も元気になり生物の多様な森になり、そしてエネルギーも得られる。こうして考えていくと、この森林発電プロジェクトの活動にはたくさんの希望が感じられます。また森の中での活動・作業はとても楽しく、年上の大人の方と一緒に活動するのは非常に勉強になります。これからもこのプロジェクトに関わっていきたいと思います。

「森のピザ窯」の企画、実行

 2001年6月2日に行ったイベントで、県立大学生20人、外部の団体10人ほどが参加しました。場所は多賀町高取山ふれあい公園で、午前中はピザを焼くための燃料であるまきを集めた後、ピザ生地をこねて発酵させました。午後にピザ窯で、薪を燃料にピザを焼きました。

 ピザを楽しみながら、木質バイオマスエネルギーを、一番単純なかたちの薪を燃やしてピザを焼くということを通し て、体験してもらえたと思います。

「犬上炭つくり」の企画、実行

 湖東地域振興局と県立大学環境科学部の共催で2001年12月11日〜16日にかけて、県立大学圃場実験施設で行いました。1999年にも同様のイベントがありそれの第二弾という感じです。

 今回炭にしたのは、犬上川河畔と佐和山の竹、犬上川上流の多賀町で間伐したヒノキです。現在、県立短期大学跡地に市民病院が建設されています。その工事に伴って、市民病院に面している犬上川沿いの竹林は伐採される予定です。工事によって伐採され、廃棄するのではとてももったいないと考え、伐採予定地の竹林の竹を使って炭を焼くことになりました。 16日には市民など一般の人にきていただいて、交流センター研修室で「炭つくりセミナー」を行い、炭や木質バイオマスなどについての講演を行いました。そのあと、炭窯から出来上がった炭を出し、皆さんに持ち帰っていただきました。今回の炭はなかなかの出来でよかったと思います。

その他

 今年度僕は「森林インストラクター資格」を取得できました。これは全国森林インストラクター協会認定の資格です。これが取れたからといってお金になるような資格ではありませんし、すぐ人を森に案内できるというものでもありません。森についての勉強の一環として取れただけです。夏には、長野県の「NPO法人やまぼうし自然学校」でガールスカウトの林業体験のインストラクターとして数回活動もしましたが、多くの経験を積んで、インタープリター、インストラクターとしての実力をつけていきたいと思います。

 最後にこれからの活動についてですが、やはり今まで同様森林を中心として積極的に活動していきたいと思っています。継続して参加している活動はもちろんこれからも参加していこうと思います。これから挑戦していきたいのは、フローティングスクールの山版ができたらよいと思っています。フローティングスクールとは滋賀県の小学生が5年生になると、環境学習船うみのこに乗って、琵琶湖の上で1泊2日の環境学習をするというものです。来年から全小中学校で総合的学習の時間が始まります。これを利用して何とか面白い森林環境学習を作りたいと思っています。