「社会システム分析設計演習2001」における学生企画書と地域社会

近藤隆二郎

環境計画学科社会計画専攻

環境社会システム大講座

 教員自身による地域社会との関係については、いろいろな実態もあるし、各種委員会活動などについて論じてもどうかなと思うので、本稿では学生と地域社会との連携について考えてみたい。参加型まちづくりや地域経営がしかけられている現場では、参加主体として学生が期待されていることも多い。学生が自主的にかかわる活動はともかく、講義演習を通したかかわり方について考えてみたい。 

現場(フィールド)との関係重視

  環境社会計画では、当然ながら現場フィールドを前提として教育を行うことが求められる。机上の学習ではどうしても限界があり、現場の持つ理論との矛盾や、現実の厳しさなどを実感することが必須である。

【フィールド重視】…現場フィールドへ学生を積極的に連れていくことが重要。リアリティの体得のために、実社会とぶつかりあうことを期待している。例えば、ヒアリングという、人の話を聞くことの難しさ、大切さ、そこから何を得るのかなどを学ぶ。同時に、グループワークにおける役割分担と議論の機会提供もできよう。身近な課題で練習した上で、現場フィールドへ展開することで、フィールドワークのエチケットにも精通することを期待している。社会的常識の講座(マナーやルール)も同時に必要かもしれない。

【社会人との交流】…社会人に直接話をしてもらう機会を積極的に設ける。現場の方や関係する専門家などと討論することにより、フィールドの考え方を補強してもらいたい。場合によっては、社会人大学院生や特殊な?経験をした学生による発表の機会をセッティングすることも考えたい。

アウトプット/情報発信・受信 

大学内で行われている教育活動についても、可能な限り社会に公表していくことが求められている。学生側にしても、作成した作品や報告書、レポートの評価を担当教員だけに求めるのではなく、より積極的に外部の評価を受ける方が、現実的な感覚を実感する意味でも好ましい。そこでは、素人さんを対象として情報を伝えなければならないことも多く、専門用語を噛み砕き、わかりやすく組み直すことも要求される。この作業は、プレゼンテーション技術を磨くとともにより内容的にも理解をさらに深めることにもつながる。

【アウトプット型】…プレゼンテーションを磨く機会を積極的に講義内に取り組む。発表表現力とオーラル能力が必要。画一的なレポート形式等にとらわれず、自由な発想で情報を発信するアウトプット形式を構想している。WWWや冊子、CD-ROMや企画書などの形態ももちろん考えられる。最終の表現形式から調査分析内容を構想するプログラムも考えられよう。

【社会とのリンク】…情報を発信することにより、一般社会から積極的な評価や批判提案を受ける機会を設けたい。WWWにおける公開などを通した双方向性など。インターネットを利用した井戸端的情報交換も可能であろう。何らかのコンペや公募等とリンクすることも考えられる。あるフィールドを対象として複数の企画案をワークショップで検討するといった実際のまちづくり支援的な機会も考えたい。

【企画ストック化】…学生が生みだしたいろいろな企画をデータベースとしてストックする。学生というある意味で自由な発想をする世代による企画情報のストックは、その集積だけでも地域づくりに役立つはず。データベースを学生に開放することにより、企画の見本として参考に使用することも構想できるが、オリジナル(著作権)に関する留意が必要である。


「社会システム分析設計演習2001」におけるとりくみ

  以上のような点を留意して試行錯誤を繰り返している、環境社会計画専攻2回生の必修科目『社会システム分析設計』『社会システム分析設計演習』を紹介したい。この演習は、現実の社会事象から社会システムを抽出し、設計するプロセスについて実践的に学ぶことを目的としている。具体的には、システム思考の講義とともに、システムの関係性を解くための「発想法」やモデル化の基礎となる「図(ダイアグラム)」の描き方、システムモデルを実践的に設計する場面としての「企画法」、PC(Visio)を用いた「プレゼンテーション方法」などを学ぶプログラムとなっている。 本演習の最終課題「都市サービス施設の社会システム分析設計演習」では、コンビニやレンタルショップといった具体的な事例を学生各自が自由に選択して設定し、現状の社会システムの分析および設定した理想に基づく社会システム設計に分けてモデル化を試み、コンセプト企画書としてA3用紙2枚にプレゼンテーションを作成する。40人を相手にひとりひとりemailで提出する中間報告にひとつひとつ添削をしながら最終作品にまでたどり着く演習であり、“ハマル”学生にとってはおもしろく、嫌な学生にとっては地獄の演習らしい。もちろん、教員側も大変である。 今年も40の企画書ができあがった。『エコロジー&エコノミーコンビニシステム』『平和堂環境活動システム』『お食事列車でエコな旅』『エコってる!?−ホテルの宿命・残飯を減らす−』といったタイトルであり、全員がVisioにより作成したために完成度はかなり上昇した。また、調査過程でお世話になった対象地の方々を対象とした「企画フィードバックキャンペーン」を始めた。御礼を兼ねて、完成した企画書をそれぞれが先方に報告することにした。現在実施中なので、先方からのレスなどが来るかどうかは不明であるが、演習と社会とのひとつの接点を開拓している試みと言えよう。なお、送付挨拶文に以下のように付け加えた。「次年度以降の構想といたしましては、もしも可能でありましたら、実際の施設や商店街などをクライアントとして設定させていただき、複数の学生をプランナーとして設定し、企画コンペのような形式をとるといった、より実情との接点が強い方法も試行錯誤しております。また、最終プレゼンテーションの審査員として外部の方をお呼びすることもできないかor外部公開で実施できないかなどとも考えております。そのあたりにつきましてもご意見いただけましたら幸いでございます」。実現できればおもしろいだろうナ。



「かし乃湯〜菓子*貸し〜」

制作者:川口文乃




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※http://www.ses.usp.ac.jp/users/rcon/edu/SocDesign/syllabus2001.htm