環境・建築デザイン専攻この1年

環境・建築デザイン専攻主任 

奥貫 隆

1はじめに

 環境・建築デザイン専攻の応募倍数は、一般入試の前期、後期を通じて5・9倍の水準を維持している。それに加え、推薦入試、帰国子女、私費外国人留学生、編入学、転学部、転学科などのさまざまな経路を経て未来に希望を持った学生が入学してきており、指導にあたる私達教員にとっては、励みになるとともに責任の重さを痛感する。

 特に環境科学部に環境・建築デザイン専攻があり、建築計画、建築デザイン、安全防災、ランドスケープ等の教育カリキュラムを有する専攻のあり方に関心を抱き進学してくる学生が多数いる。次の時代に社会が求める人材を育成するためには、指導する教員個人の資質及び教員間のコラボレーションによる高度の教育水準の確保が不可欠である。学部、大学院前期、後期の全課程が整った今、研究科、学科、専攻のあり方について大学設立時の理念を踏まえた上で、発展的な論議の機会を増やす努力が求められていると考える。

2教員の去就

 平成13年4月を持って石田潤一郎先生が退職され、京都工芸繊維大学工芸学部造形工学科教授として就任された。平成7年滋賀県立大学開学以来、6年余に及ぶ環境科学部の創成期を築きあげ、教育、研究はもとより学務一般にわたって多大な業績を残していただいた。感謝するとともに、新任地において近代建築史の第一人者として更なる業績をあげられることを期待したい。

 また平成14年3月には、杉元葉子先生が一身上の理由で退職される。石田先生同様に、開学以来建築デザイン教育の基盤づくりに貢献していただいた。学生指導にかける情熱は、並々ならぬものがあった。お二人の先生方の熱意を受け継ぎつつ、環境・建築デザイン専攻としての伝統を形成していくことが私達に課せられた責務である。

 一方、石田先生の後任として金沢工業大学工学部建築学科から冨島義幸先生を平成14年4月1日から助教授として迎えることとなった。若き教育者として担当講義をはじめ設計演習、フィルドワーク等で学生指導にリーダーシップを発揮していただきたい。

3学外交流等

 平成13年7月23日から7月31日 交流センターロビーにおいて「ふたつのすまい+α」展/東京芸術大学名誉教授 藤木忠義氏巡回展を開催した。また併せて、同氏を講師に招き、環境セミナー「いまliving roomのつくりかた」と題して講演会を開催した。

 卒業研究、設計展覧会の最終日にあたる平成14年2月17日には、交流センター大ホールで北山創造研究所代表 北山孝雄氏を講師として特別講演会「想像から創造/時代は変った!元気に生きる知恵」を開催した。生活プロデューサーの肩書きを持つ北山氏の精力的な活動に学生達は、大いに触発されたであろう。

 学生活動では、国際AKIND委員会(滋賀県商工観光労働課主催「Beautiful Business Plan Competition」において大学の部でACT(環境科学部、人間文科学部))が最優秀賞を受賞した。学生達がまちのために何ができるか、学生が地域に入り込み、起業家としてビジネスを起こす、そのプロセスを提示した内容が評価されたものである。また関西でランドスケープ教育を実践する6大学が共同し「ランドスケープ6大学展001」が平成13年11月26日・12月6日の11日間、京都芸術センターにおいて開催された。参加した6大学は、京都大、京都造形大、神戸芸工大、大阪府立大、大阪芸大及び滋賀県大である。出展作品それぞれにに各大学のデザイン教育の特徴及び学生の資質の違いが見られ興味深かったと同時に、環境・建築デザイン専攻学生のプレゼンテーション能力の高さを再確認した。

4今後の展望

 環境科学としての建築をいかに教育するか、大学設立以来の課題であり、模索する日々が続いている。社会が求める新たな建築家像を探り、そうした社会のニーズに応える、あるいは、ニーズをつくり出していく、つまり文化の担い手としての建築家をどのように育て社会に送り出していくか、つまり、環境科学としての建築の間口の広さと、社会の要請にプロフェッションとして応える深い専門性をどのように身につけさせるかが問われている。そのために、教育者、研究者、実務者としての多様な顔を持つ教員集団が、その特質を発揮し、教育現場を活性化するためにどのように連携していくかが今後の大きな課題であると考える。