地域社会との連携

石川義紀

環境計画学科社会計画専攻

環境社会システム大講座

 滋賀県立大学は行政体である滋賀県が設立したものなので、当然のことながら、当初の構想の中には大学の果たすべき役割のひとつとして、地域との連携あるいは地域への貢献ということが考えられていたのであろう。大学に蓄積されるソフトウェア(文献、資料、経験、知識、技術、技能など)とハードウェア(設備や機材など)を活用できることは地域にとっては大きな利点である。

 であるから、大学と地域社会との連携という話になると、たしかにそれは大学の持つ大きな使命のひとつということになるのであろう。しかし現実には、地域との連携が非常にしづらくなる要因がいくつかある。

 そのひとつが大学の立地条件である。地域との連携といっても町内会のような狭い範囲に限られるなどということはない。狭くとも立地している市や県の範囲、もう少し広くなれば近隣府県も含めた地域ということになる。相手が地域といっても実際には、行政機関、市民団体、企業といったところが相手となる。これらを相手としていろんな活動をしていくことになるが、その地理的な範囲としては上に述べた場合のうち近隣府県程度の領域に広がることが多いであろう。国レベルの話になると、ほとんどは首都圏に集中するから、これは少し別の話になる。

 県立大学と地域(近隣府県を含めた範囲で)との連携を行うのが容易であるかといえば、必ずしもそうではない状況がある。そのひとつが交通機関の問題で、他の都市や地域へのアクセスの便がよくないのである。滋賀県全体が交通に関してはあまり恵まれた状況にないので仕方がないが、ここ県立大学はアクセスの便がたしかによくない。滋賀県の行政機関は当然に県庁所在地である大津に集中するし、近隣府県といっても京都・大阪ということになるから、出かけるとなると、簡単な用事でも半日がかりである。この点では、大津付近に立地する大学は有利である。

 出かける側と同様に、大学を訪問する側についても同じことがいえる。大学への来客の最初の言葉はたいていが、「環境はよいけれど遠いですね」。である。

 このような欠点を克服するのに、交通アクセスの便利な都心に活動拠点を設ける大学が多い。公開講座なども都心の拠点で行えば、人も集まるだろうと思う。

 他の大学との連携という話のなかで出てくるのが、単位の互換制度である。よい制度だとは思うが、交通の問題からほとんど実現性がないケースが多い。歩いて行ける距離にあるところならともかく、2時間に1本のバスの便では、滋賀大との交流はほとんど無理である。車が足がわりという国ならともかく、学生も滋賀大の講義に出かける気にはならないだろう。冬は風も強く天気も悪い。京大と阪大の場合でも単位互換制度を利用する学生はほとんどいないというのは、時間の問題が大きいのではなかろうか。

 大津市の市民団体の立ち上げの作業を昨年からやってきたが、彦根と大津の往復で時間と費用がかかるのには困った。公共交通機関を使っても、車を使っても片道1時間半はかかる。結局半日を使わなければならない。市民団体での会合は少なくとも週一回、多ければほぼ毎日である。彦根からではとても付き合いきれるものではない。また、日野町へでかけることが月に一度ほどあるが、車を使わなければ、会合への参加はほとんど不可能である。

 また、県立大学では公開講義として、学生のための講義に一般市民を受け入れている。参加している市民に交通手段を尋ねると、車を使って来ざるをえない、という答えがほとんどである。車を使わずに来るのはとてもたいへんだということである。このように、地域との連携とはいっても、立地場所と交通条件から制約を受け、実はそれが決定的に影響するということがある。ここ彦根などはまだましなほうかもしれない。JRに乗りさえすれば、名古屋へも大阪へも1時間半という位置なのだから。それでも、都心に近い位置に立地する大学に比較して不利である。せめて彦根駅と南彦根駅からのアクセスがよければ、と思う。