環境計画学科環境・建築デザイン専攻の一年

水原渉

環境計画学科長

環境・建築デザイン専攻主任

学生の状況

本年度は、推薦入試10 名(受験者13 名)、前期日程試験28 名(同122 名)、後期日程試験16 名(同58名)の合計54 名の合格を出したが、4 名が入学手続きを行わず、定員通りの50 名の入学者を得た。現時点、2006 年1 月末での4 年生以上の学生の進路などについては、就職内定者約20 名、進学者のうち大学院13名(うち外部3 名)、専門学校1 名などとなっている。

現在までの本年度の学生の異動は、休学中の学生8 名(4 年生以上6 名、3 年生1 名、2 年生1 名)で、退学は1 名(2 年生)であった。なお長期留学生が1名いる。

この間、本専攻の何人かの学生が賞を獲得した。昨年度の卒業生(現在、本学M1)の湯本佳子さんが団地再生産業協議会主催の「団地再生卒業設計優秀賞」を受賞した。また、3 年生の尾田昌之君が、2005 年度「京町家学生コンペ」で3 位(奨励賞)を獲得、同じく3年生の「ストリートファニチャー・サイン」学生プロポーザル(主催:独立行政法人「都市再生機構」本社)で井上恵さんの「Wooden Furniture」が入賞している。また韓国プサンにて9月、滋賀県立大学と武蔵工業大学と東亜大学との日韓河川アメニティワークショップに松岡研究室の学生中心に14名参加し、市役所にてその成果を発表、学生合同活動がニュースとしてソウル新聞に掲載されたことも、本年度に特筆すべき学生活動と言えるだろう。

毎年、最優秀卒業研究に授与される当専攻のEA 賞(論文)は大西優子さんに送られた。自分のふるさとの伊根町のユニークな船屋群を対象に、その生業の息づいていた姿を丁寧に調べ、生活と結びついた船屋の変化をありありと提示していることが評価されたと思う。今年、本専攻で学んだ学生で初めて博士号取得者が生まれた。その卒業生は森井雄史君で、本年3 月、「木造建物の被害経験に基づき耐震性能を考慮した地震時損傷度予測手法に関する研究」という題目の論文を提出、京都大学博士(工学)を取得した。学術の面でも本学の教育が芽生え育っていると言えるだろう。

  

将来計画

最近の受験の傾向として全国的に受験倍率の低下があるが、その中で、本専攻でも倍率が低下してきていることは事実である。現状は定員割れをするという様なことはないものの、将来的に厳しい状況に陥らないようにするために今から“生き残り策”を考えていく必要がある。

これには、当然ながら、受験生を引きつける魅力ある教育、そして卒業生が自信を持って就職、進学ができる教育を行っていく必要がある。

その方向で、本年度はカリキュラムの検討を行った。これには授業内容の見直し、非常勤講師削減の問題、JABEE 認定を視野に入れたものでもあったが、分かりやすい教育体系、科目間の関係など外部条件を受身的に捉えるのでなく、積極的に充実させていく点で前進があったと考えている。

来年度から独立行政法人化された本学の中で、研究教育を進めていくことになるが、表面的な競争に、そして時流に流されて行くことのないように気をつけていかなければならないだろう。そのため、当然ながら、滋賀という地の特性から「地の利」を探しだし、また環境科学部の学科・専攻構成を充分に活かしていく必要がある。

将来計画に向けては、上記のカリキュラムも含め、一定、議論が積み重ねられてきている。2003 年頃から議論されてきた環境計画学科の環境・建築デザイン専攻と環境社会計画専攻の学科独立の課題について、4 月7 日の学科会議で学科構成員の「学科独立の意思確認」が行われた。当初、独法化初年度に両専攻とも学科体制にすることが追求されたが、“上部”の判断によって、それは実現できなかった。これは独法化の初期の時点で行われるべき課題として残されているが(位置づけられているのではない)、当専攻としても曖昧にせずに更に追求していく必要がある。このことで、両専攻の特性と環境科学部の(構成の)ユニークさが鮮明にされ、学部内の相互の“低い壁”と相まって専門化と総合化の教育・研究的機能をよりうまく促していけると考える。

教員の異動

教員の側については、3月末日を持って構造力学分野の福本教授が定年退職され、代わって新しく布野教授を、そして、更に、これまで懸案となっていた講師職に山本講師をお迎えした。

福本先生には構造力学分野でも特に耐震構造、中でも、滋賀の地にも多く建てられている在来工法による木造住宅の耐震性について先進的、精力的に研究してこられ、また卒業研究、大学院教育を通して、多くの学生の耐震、木造の教育に力を入れてこられた。

新しく赴任された布野先生、山本先生とも東南アジアの都市、集落、建築にお詳しく、教育経験も豊富で、環境・建築デザイン専攻としても強力な陣容を得たと考えている。

非常勤講師の削減

自治体の財政難の影響もあり、昨年度から非常勤講師の削減が求められている。地方の規模の小さな大学で建築学の教育を十全に、そして多様に行うためには、非常勤の先生方の力を借りることも必要であるが、ある程度はやむを得ないことである。しかし、県当局の一方的な「非常勤講師削減」という課題で、突きつけられてきたことは、我々として少し残念と思う。それはともあれ、教育内容の見直しを行い、削減された分を現有の教員の努力で行うこともすでに始めている。

外部評価

今年度には初めて外部評価を受けた。外部評価をお願いしたのは仙田満愛知産業大学大学院教授と森田司郎日本建築総合試験所理事長(京都大学大学院名誉教授)であった。指摘された点は大凡以下の通りである。

環境という軸を打ち出した滋賀県立大学、環境科学部、環境建築学のユニークさはもはや多くの大学で環境が取込まれている中で色があせてきている。他大学の情報を収集するなどして、環境・建築デザインの研究教育の独自性と理念を明確にする必要がある。他学部とのコラボレーションなども押し進めていく必要がある。教育成果を学生が学会論文として発表できるように努力すること(そのためには旅費援助なども検討が必要となる)。どういう人材を育てるべきか明確にすること。UIA、JABEE 対応を考えると学部と大学院のつながりを強化する必要がある。非常勤講師の積極的活用、客員教授の活用検討も考えてはどうか。

科研費の応募の増加。競争的経費を若手研究者が獲得できる仕組みを提案して欲しい。環境こだわり県である滋賀県が従来の枠を離れた環境総合系を創設するなど大学が県当局に働きかける必要がある。

現代GP の採択など(建築・デザイン専攻教員が大きな役割を果たしている点も併せて)高く評価する。総合コンサルタント的機能など社会の要請、社会のリードの機能が求められる。入試については少子化傾向の動向からすれば頑張っている。

以上、貴重なご意見として、そして内発性を大切にしながら、今後の実践に生かしていきたい。