環境生態学科の一年

近雅博

環境生態学科長

開学から10年を経て、さらに来年度からの独立法人化を前にして、この一年はこれまで環境生態学科がおこなってきた教育と研究活動を総括し、将来の構想を検討する節目の年であった。

今年度の初めに、「環境生態学科」という学科名称を変更した方がよい、という強い要望が学科の構成員の中からあがり,学科名称変更についての話し合いがもたれ、新しい学科名称を「琵琶湖環境学科」とするという案にいたった。参考までに,学科名称の変更についての事由をまとめたものを下に掲載する:


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環境科学部は、人間の科学技術の進歩がもたらした豊かな経済社会の実現が,自然環境に重大な影響を与えることによって生じた環境問題の自然科学的そして社会科学的機構を解明し、人間生活と自然環境との調和を可能にする持続的な社会経済システム,地域環境計画、資源管理システムを確立することを目的として設立された。すなわち,環境科学部の教育の目的は、環境問題について正確な知識と広い視野を備え,環境問題の解決に貢献できる人材を社会の各方面に送り出すことであり、環境科学部の研究の目的は,環境問題の総合的理解と解決に必要とされる先進的な研究を推進すること、ということができる。

これを受けて,環境生態学科は次のような理念・目的のもとに設置された。「湖沼・河川・沿岸海域などの水域とその集水域をなす陸域。さらに地球的規模の気圏・地圏と生物圏の間の相互作用などを対象として、それに関わる物質循環,生物群集の役割、人間活動のインパクトに対する自然システムの反応,環境浄化能力や環境調節能力などの理論と応用について教育・研究を行う。この場合、琵琶湖やその集水域を教育に活用できることは,大きな利点といえる。本学科では、人と自然の共存に関するこのような再生復元・持続的利用や自然環境保全,生物多様性保全などに関する専門的知識と技術を備えた人材を養成する」。

環境生態学科は以上の理念に沿って教育と研究を行い、この10 年間に有為な人材を世に送ってきた。この間に環境問題に対する関心は国内外で高まり,これを背景として、「環境」を冠した学部・学科・講座が急増するとともに,大学に対しては、環境の保全のみならず,悪化した環境の修復あるいは再生に貢献できる基礎ならびに応用的な教育・研究が期待されるところとなった。そこで、本学科ではこれまでの教育・研究の理念をさらに発展させて,社会の今日的な要望に応えるために、より実践的な環境問題についての教育と研究を目指すこととした。すなわち,琵琶湖とその集水域を主なフィールドとし、ここにおける環境問題を総合的に把握して,問題解決に向けての原理と方法論を教育・研究するともに、その成果を国内外における環境の修復・再生に広く応用できる能力を備えた人材を養うことを学科の理念とした。またこの理念を端的に表すために学科名を「琵琶湖環境学科」に変更することとした。


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教員組織については,昨年度末に荻野和彦教授、安野正之教授が定年で退職され,さらに上野健一講師の転出があり、これまで学科を支えてこられたメンバーが3名抜けるという大きな変化があった。本年度4月からは浦部美佐子助教授が着任されたが,あと2名の欠員については現在公募により選考中である。また、近雅博と倉茂好匡が教授に,丸尾雅啓が講師にそれぞれ昇任した。