生物資源管理学科の一年

川地武

生物資源管理学科長

生物資源管理学科の一年は春に始まり、秋に終わる。春は生物を扱う先生や学生が多いせいか、種まきや苗の植付け、水田の耕起など野外作業が始まり、圃場は活気にあふれる。そこに、卒業研究で生物を扱う新4回生が混じり、教師や技師も生き生きとする。生物を直接扱うことのない教員にもその雰囲気が感染し、やはり何か心うきうきする。今年の夏は猛暑であったが、夏休みも水遣りや計測に追われる学生や教員の姿が圃場に見られた。オープンキャンパスには高校生の圃場ツアーがある。当学科の特徴のひとつであるだけに、圃場見学者には良い印象を与えたい。ここでまた関係者は苦労する。秋、実りの季節である。やはりメインは米である。研究用とはいえ、おいしい米が出来たか、気になる。学生諸君が稲の生育環境や代謝状況などの調査を行った、最後の成果物である。研究室によってはこの成果物を湖風祭の模擬店の商品に加工し、出来栄えを消費者に聞く。ここまで来ると当学科の学生も教員も主な仕事場を屋内に移す。ここからは、分析、データ整理、評価、報告書作成、論文執筆である。そして、2 月には発表会。今年のできの最後はここで披露される。わが生物資源管理学科の一年のサイクルである。教育機関に共通するサイクルであるが、当学科では一層はっきりとした形で回るサイクルであり、生物や圃場を研究の対象や手段としない私のような教員にとっても、この地球・生命サイクルと一体化したリズムで仕事ができることは一種の快感である。

大学には現在いろんな波が押し寄せてきている。受験生の減少、独立行政法人化、大学間競争の激化、大学の大衆化と国際化等々。これらを前に、しばし作戦タイムを取り、戦略を練って乗り切りたいが、そうも行かないのが大学である。開店営業しつつ、将来構想を練り、そのための布石を打つのはなかなか容易ではない。当学科でも受験生が減少気味、入学後の勉学方向が発散傾向、卒業生の就職内定率もまだまだ。希望職種への就職はなおさら。この状況を打開するには、しっかりした戦略と実行力が必要である。また、少々時間もかかる。学科の理念も教員間で一致しているわけではないが、学科では法人化後へ向けて組織や教育カリキュラムの見直しに着手した。走りながら考え、ベターな方向へ舵を切りやすい環境を作るのが今の大学の状況かも知れない。法人化は前向きにとらえれば、大学の自立性を向上するチャンスでもあろう。我々の構想力、集中力、行動力が問われる。

この一年は新任学科長として試行錯誤の日々であった。研究費配分、非常勤講師削減、定年退職される教員の補充人事など期限つきの案件が多く、十分な議論を経ないで見切り発車したものもあった。その是非は後日の判断を待つことにしたい。9 月には岩間助手が一年の海外研修から帰り、12 月には当学科としては新分野である水産資源を担当する杉浦助教授が着任した。彼らの新たな発想、パワーに期待したい。