研究の組織化を

1.教育研究をめぐる課題

大学組織が独立行政法人となるまでの残されている時間はなくなった。国立大学からはすでにこの波を超えるに際してのさまざまな経験が伝えられているが、教育や研究のあり方についての話題は考えられていたほどには多くない。それが法人化という組織のあり方の変更とは直結してイメージしにくい性質のものであるためであろうが、法人化という場面から離れてもこれらについては課題が多いのではないか。

たとえば教育面でのトピックとしては、昨年の12月に、県立大学グリーンコンシューマーサークルがグリーン購入ネットワーク主催の第8回グリーン購入大賞全国コンクールで多くの一般企業を制して大賞を獲得し、続いて、県立大学環境マネジメント事務所が全国学生環境活動コンクールで環境大臣賞を獲得したことが挙げられる。いずれも審査会では全く異論のない満場一致での授賞であった。

持続可能な社会の実現をめざすための人材育成という環境科学部創建のテーマから考えれば、多様な視点を備えることが要請されるこうした活動について高い評価を得たことは学部の教育プログラムと学生の組織的活動とが良いかみ合いを見せていることとも言えよう。しかしながら、非常勤講師の削減に伴うカリキュラムの規模縮小を考えると、教育面での峰づくりの作業が遅れていることは否めない。

転じて研究面での動きでは研究費算定への成果主義の試行的な導入という仕組みの変化はあったが、それが研究の積極化にどう反映しているのかは未知数である。今後は教育への重点化という大学全体の基本方針があるとすれば、研究に向けられる資源の割合は相対的に減少せざるを得ず、問題解決型の研究のためにも連携型の研究方法へのシフトが必要になるのではないかと考えられる。

2.研究組織化への契機 外部研究連携

現在、環境科学部に関係する外部との研究連携をめぐる大きな動きとしては、滋賀県琵琶湖環境部水政課の呼びかけによるものと、国際湖沼環境委員会の呼びかけによるものとの2件をあげることができる。前者は琵琶湖環境保全のための政策的な研究課題を見いだし整理することを目的とし、本学部、琵琶湖環境科学研究センター、琵琶湖博物館、琵琶湖環境部、という滋賀県関係の機関連携を目指しており、すでに3回の会合が開催されている。後者は、世界の各湖沼について自然科学的見地のみならず社会科学的見地からも同様に、広範な資料収集と整理を経て極めて規模の大きなデータベースを構築し、湖沼管理のための国際的な共通資産の形成とガバナンス等も含めての活用をはかろうとするものである。世銀など多くの国際機関を背景にしているのがその特徴と言えるだろう。これらの構想はどちらにしても今後の設計展開に未確定の面が多いのだが、それだけに本学部が組織としての立場を留保しつつ参加することは可能であり、貢献することもできよう。

先に述べたこと、あるいはまた本誌前号に記したことと重ねて考えると、こうした研究企画に組織として参加することの意味は改めて述べるまでもなく「カーテン」を開けるための現実の仕組みを作ることに他ならない。具体的には、教員それぞれの環境学全体の中での位置づけを再確認すること、学部の研究戦略組織を設けること、そのための担保となる学部共同研究費のような財政措置を講じること、先に挙げたような連携事業への参加をそのための契機として有効に活用すること、である。

これまでの大学組織では、教育面について教務委員会など各種のものが設置され機能して来たが、組織として研究のあり方についての戦略的な関与は全くと言えるほどなく、学部の段階でも事情は同様であった。研究機構具体化への歩みを考えるべきである。

環境科学部長・環境科学研究科長

土屋正春