はしがき

 近代科学の発達は人間社会の大きな繁栄をもたらしたが、その見返りに多様な環境問題を招き、人類の生存が危惧されるまでに至っている。此の環境問題に善処し、将来世代に亙って人類の生存と持続的繁栄を維持するために、環境調和型社会の建設と、それに必要な環境専門家育成と研究推進が強く望まれている。この要望に答え、平成7年4月に開学した滋賀県立大学にわが国で初めての環境科学部が設置され、環境問題についての総合的な学部教育が進められている。

 わが国で初めての試みである本環境科学部における総合的な環境教育の目的と内容について、皆様のご理解を戴くために、環境科学部年報の第1号として、本学部における教育の特色についての特集号の出版を企画した。環境問題は、自然環境と人間社会の複雑なかかわり合いを包含するので、専門分化の進んだ従来の学問体系では、部分的にしか対応できない特性をもっている。この課題を乗り越えるため、本環境科学部では、「環境科学部教育のグランドデザイン」で述べられるように、3年にわたる慎重な討論にもとづき、独特の教育体系を組み教育を進めている。環境問題は、自然環境から人間社会にまたがる多様な側面をもつため、「私の環境学」の章で述べられるように、環境について豊富な経験と独自の環境観をもつ多様な教員により、環境教育を進めている。本環境科学部の新しい教育の今後の発展と成功は、教員各位の教育目的に向かっての理解と努力、ならびに有機的協力に大きく依存している。関係各位のご援助、ご鞭撻を切に願うものである。


1997年1月13日

滋賀県立大学環境科学部長

坂本充